世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1553信(2020.10.26)

  • 教皇が新枢機卿13人を、日曜恒例の講話で突如指名
  • 教皇、同性婚に一定の理解 歴代初の見解、欧州中心に反響
  • 中国がバチカンと司教任命権暫定合意を2年延長したと発表
  • バチカンも司教任命権暫定合意の2年延長を発表
  • 教皇、公務の場で初めてマスク着用
  • フィリピンの首都マニラでXマスパーティー禁止へ
  • イスラエル、米国の仲介でスーダンとも正常化合意
  • ポーランド憲法裁がほぼ全ての人工中絶を違憲とする判決
  • 仏サンモーリス大聖堂の中世彫刻保護計画に隈研吾氏の案
  • ≪メディア展望≫

 

◎教皇が新枢機卿13人を、日曜恒例の講話で突如指名
 【CJC】教皇フランシスコは10月25日、サン・ピエトロ広場を訪れた人々に、日曜恒例の「正午の祈りの集い」を行っている際に、来る11月28日に枢機卿会議を招集する旨を告げ、それと共に新しい枢機卿13人の名前を発表した。ロイター通信などがローマ発として速報した。13人の内9人は、教皇の死去または退任後の後継者を決める選挙「コンクラーベ」で投票する資格がある。残りの4人は、教会に対する長年の貢献を理由に選出されており、80歳以上であることから投票の資格はない。
 13人の出身国は、イタリア、マルタ、ルワンダ、米国、フィリピン、チリ、ブルネイ、メキシコの8カ国にわたっている。その中の1人、米首都ワシントンのウィルトン・グレゴリー大司教は、5月のジョージ・フロイド氏死亡事件を受け、米国内における人種間の緊張緩和に向け対話を呼びかけたほか、トランプ大統領がワシントンのカトリック教会を撮影場所に使用した件で間接的に大統領と対立した。
 ルワンダとブルネイからの選出には、カトリック教徒の少ない遠隔地域における教会の権限拡大推進を目指す教皇の政策を反映、またチリからあえてスペイン人を選出した選択には、高位聖職者の性的虐待問題に揺れる同国のカトリック教会を外国人の関与により再興しようとする意図が感じられる。
 公設バチカン・ニュースは、新しい枢機卿13人の名前を次のように報じている。

[80歳未満の有権枢機卿]
▽マリオ・グレック司教=シノドス事務局・事務局長(マルタ、63)
▽マルチェッロ・セメラーロ司教=列聖省長官(イタリア、72)
▽アントワーヌ・カンバンダ大司教=ルワンダ・キガリ大司教(ルワンダ、61)
▽ウィルトン・グレゴリー大司教=米国・ワシントン大司教(米国、72)
▽ホセ・アドヴィンクラ大司教=フィリピン・カピス大司教(フィリピン、68)
▽セレスティーノ・アオス・ブラコ大司教=チリ・サンチアゴ大司教、カプチン・フランシスコ修道会(スペイン、75)
▽コルネリウス・シム司教=ブルネイおよびクアラルンプール代牧(ブルネイ、75)
▽アウグスト・パオロ・ロユーデチェ大司教=伊・シエナ‐コッレ・ヴァル・デルサ‐モンタルチーノ大司教(イタリア、56)
▽マウロ・ガンベッティ神父=コンヴェンツァル・聖フランシスコ修道会、アッシジ・聖フランシスコ修道院院長(イタリア、54)

[80歳以上の枢機卿]
▽フェリペ・アリスメンディ・エスキヴェル司教=メキシコ、サンクリストバル・デ・ラス・カサス名誉司教(メキシコ、80)
▽シルヴァーノ・マリア・トマーシ大司教=教皇大使(イタリア、80)
▽ラニエーロ・カンタラメッサ神父=教皇付説教師、カプチン・フランシスコ修道会(イタリア、86)
▽エンリコ・フェローチ=ローマ教区サンタ・マリア・デヴィーノ・アモーレ主任司祭(イタリア、80)


◎教皇、同性婚に一定の理解 歴代初の見解、欧州中心に反響
 【CJC】教皇フランシスコがカトリックではタブーとする同性愛者の事実上の結婚を社会的に認めるべきだと発言したことが10月21日分かった。同様の見解は歴代教皇で初めてとみられる。ローマ発共同通信が報じたのを紹介する。
 教皇は「同性愛者も家族になる権利を持っている。何者も見放されるべきではない」と語り、同性愛者同士の事実上の婚姻「シビル・ユニオン」(合同生活)が可能となるような法的整備が必要だとの考えを示した。
 カトリック教会は同性愛や避妊、離婚をタブー視するが、教皇フランシスコはこれまでも実社会に即した教会変革が必要だと主張し柔軟な見解を示してきた。一方で、2016年にはシビル・ユニオンと男女間の結婚は明確に区別されるべきとの考えも示している。
 映画「フランシスコ」はエフゲニー・アフィネフスキー監督による長編ドキュメンタリーで、教皇や、教皇の最高顧問である枢機卿らへの直接取材を敢行した作品。ローマで開催中のローマ国際映画祭で21日、上映された。教皇が同性婚に一定の理解を示す発言をした、とイタリア・メディアが報じた。世界に13億人超の信者を抱えるカトリックの頂点に立つ教皇が同性婚に一定の理解を示した発言として、信者の多い欧州を中心に反響が広がっている。


◎中国がバチカンと司教任命権暫定合意を2年延長したと発表
 【CJC】中国外務省は10月22日、バチカン(ローマ教皇庁)と、中国における司教任命権に関する暫定合意を2年延長することを決定したと明らかにした。
 中国とバチカンは、中国での司教任命にローマ教皇が最終権限を持つことなどで2018年に暫定合意した。この合意は22日が期限になっていた。内容はこれまで非公表だが、中国側が司教の候補を選び、教皇が最終的に任命するとみられている。
 中国外務省の趙立堅報道官は会見で、中国とバチカンは今後も意見交換を続けていくと述べた。


◎バチカンも司教任命権暫定合意の2年延長を発表
 【CJC】バチカンが10月22日、中国との間の司教任命をめぐる暫定合意の延長を発表した。『バチカン・ニュース』は、中華人民共和国間の司教任命をめぐる暫定合意が、「さらに2年の延長」をもって更新されたとし、この更新は、暫定合意の期限が訪れた日に、バチカン広報局が発表したと報じている。
 バチカン紙『オッセルバトーレ・ロマーノ』は、「合意のスタートが、双方の良いコミュニケーションと協力のおかげをもって、有益であった」と、延長の理由を伝えている。


◎教皇、公務の場で初めてマスク着用
 【CJC】新型コロナ禍に見舞われているイタリアで、教皇フランシスコ(83)が10月20日、公務の場で初めてマスクを着用した。ローマ発ロイター通信によって紹介する。
 教皇はこの日、ローマ市内サンタ・マリア・イン・アラチェリ教会で行われた世界平和祈願の集いに諸宗教の指導者らとともに出席、白いマスクを着用した。
 これまでは、バチカンで行われる週定例の一般謁見への送迎車中でのみ、マスクを着用していた。一般謁見では来場者と近い距離になる場合もあり、謁見の際にマスクを着用していないことに対し、一部ソーシャルメディアで批判が出ていた。
 バチカンでも、教皇の警護にあたるスイス衛兵に、検査の結果、陽性者が相次ぐなど、感染増加がみられる。


◎フィリピンの首都マニラでXマスパーティー禁止へ
 【CJC】フィリピンのアニョ内務・自治相は10月20日、新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、首都マニラでのクリスマスパーティー開催を今年は禁止すると述べた。保健省によると、フィリピンの感染者数は36万775人、死者は66906人に上っている。マニラ首都圏を構成する首長らが、娯楽目的の集会禁止を含む防疫措置を年末まで続けることで合意したため、と共同通信などが伝えている。
 フィリピンでは9~12月がクリスマスシーズンとされ、商業施設では既にクリスマスソングを流したり、カウントダウンボードを設置したりしている。例年、この期間中は、企業や役所が開く12月のパーティーで歌やダンスをお披露目するため、練習にいそしむフィリピン人の姿が街中で見られる。東南アジア最大のキリスト教国としてクリスマスは重要行事だが、今年は寂しい光景が展開されそうだ。


◎イスラエル、米国の仲介でスーダンとも正常化合意
 【CJC】イスラエルとスーダンは10月23日、米国の仲介により国交正常化で合意した。イスラエルとアラブ諸国の正常化合意は、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーンに続き3カ国目となる。
 トランプ米大統領は、イスラエルのネタニヤフ首相、スーダンのハムドク首相らと電話会談を行った。3カ国は共同声明で「スーダンとイスラエルの関係を正常化し、両国の交戦状態を終結することに合意した」とし、両国は農業分野を手始めに経済・貿易関係を開放していくと表明した。
 米大統領選の投票日が迫る中、トランプ大統領は自身の支持基盤であるキリスト教福音派に外交成果として訴える狙いとも見られている。


◎ポーランド憲法裁がほぼ全ての人工中絶を違憲とする判決
 【CJC】ポーランドの憲法裁判所は10月22日、胎児に障害があった場合の人工妊娠中絶を違憲とする判決を下した。英公共放送BBCのワールドニュースが報じた。
 この判決が法制化されれば、人工中絶が認められるのは、強姦や近親相姦による妊娠だった場合、また母親に命の危険がある場合にのみ限られる。
 欧州評議会のドゥーニャ・ミヤトヴィッチ人権委員長はツイッターで、「女性の人権にとって悲しい日になった」とコメント。「ポーランドでほぼ全ての中絶の根拠を排除したことは、中絶禁止とほぼ同じで、人権を侵害している」と述べた。
 ポーランドでは1993年、胎児に重篤な障害があった場合の妊娠中絶を認める法律が制定された。ポーランドで合法的に行われる中絶の98%が、胎児の障害を理由にしている。与党「法と正義」の所属議員は昨年、この法律が違憲だとして提訴した。
憲法裁判所の判事の大半は、「法と正義」党が任命している。
 アムネスティー・インターナショナルやヒューマン・ライツ・ウォッチ、センター・フォー・リプロダクティヴ・ライツなどの国際人権団体は共同声明で、「政府が繰り返し女性の権利を攻撃し、生殖に関する権利を後退させようとしている。さらに、ポーランドの司法の独立や法治主義が損なわれている」と非難した。


◎仏サンモーリス大聖堂の中世彫刻保護計画に隈研吾氏の案
 【CJC】フランス文化省は10月23日、同国西部アンジェの中世建築サンモーリス大聖堂の貴重とされる多色彫刻を保護する計画に、建築家隈研吾氏の案が選ばれたと発表した。かつて正面入り口の外側にあった「ギャラリー」と呼ばれる部分を現代建築で再建する。パリ発共同通信が報じた。
 文化省によると、フランスで中世の大聖堂に現代のギャラリーを組み合わせる試みは初めて。隈氏は「教会の建築様式とその時代の技術を研究してデザインした。中世と現代の職人が共同して新たにつくり上げる気持ちでプロジェクトに臨みたい」とコメントした。
 同大聖堂の入り口を飾るキリストや天使の彫刻は、中世大聖堂の多色彫刻の貴重な一例。アーケードのように柱や屋根で構成されるギャラリーが13世紀に建設されたが、19世紀初めに取り壊された。研究の結果、資料が不十分で完全な復元はできないとして、現代建築での再建が決まった。


《メディア展望》
 =カトリック新聞(10月25日)=https://www.cwjpn.com/cwjpn/
★叫びが「救いの始まり」=教皇の一般謁見講話
★バチカン財務法規を改正=透明性高め不正を防止
★新福者カルロ・アクティス=「現代青年の模範」と教皇
★上智大学国連WEEKSシンポジウム=キリスト者としてグローバルな活躍を=国連事務次長、イエズス会司祭らが発題
★平和をつくり出す宗教者ネット=日本学術会議会員 任命拒否に=抗議の共同声明発表

 
 =KiriShin(10月21日)=https://www.kirishin.com
★熊本豪雨災害から3カ月=復興支援を共通項に新たなつながり=人吉ハリストス正教会
★100年前のスペイン風邪に学ぶ=戒能信生氏「疫病や災害、神学的課題でなかった」
★「異端・カルト110番」開設から1年=「新天地」報道で問い合わせ相次ぐ
★「世界死刑廃止デー」でカトリック正平協が上川法相に要請
★日基教団北海教区「自治体の弱みに付け入るな」=核ごみ調査めぐり抗議と要請

 
 =クリスチャン新聞(10月25日)=https://クリスチャン新聞.com
★CLC解散=文書伝道の灯火を次代へ=お茶の水、金沢、名古屋、京都、岡山、広島各店は独立・継承
★まるで絵本の世界=ゴスペルボックス北海道巡回中
★日本学術会議の人事介入に抗議声明=日キ教会東京中会靖国問題特別委、NCC
★ミッションの実現こそ教会の成果=島田恒氏「教会マネジメント」語る
★一科目から受講できるオンライン聴講を開始=東京基督教大学

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