世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1600信(2021.09.20)

  • 教皇、スロバキア訪問終了、ローマ帰着
  • 教皇、「自由を証しし、創造性と対話ある教会を」要望
  • 教皇、ロマ共同体と交流、「偏見から対話へ、閉鎖から融合へ」
  • 十字架称賛の祝日に教皇「十字架を見つめ、証しする」
  • バチカンがブラジルの宣教会『福音の使者』に寄宿学校閉鎖を指示
  • ニューヨーク州のワクチン接種、宗教上免除主張で義務化停止
  • ワクチン接種しないと誓った米保守系ラジオ司会者、コロナ合併症で死去
  • スイス政府、妊婦へのワクチン接種を勧告
  • マカオの聖ポール大学跡で人工穴遺跡が一般公開
  • 汝矣島純福音教会を創設した趙牧師死去
  • 《メディア展望》

 

◎教皇、スロバキア訪問終了、ローマ帰着

 【CJC】バチカン・ニュースの日本語報道によると、教皇フランシスコは、9月12日から15日にかけ、34回目の海外司牧訪問(イタリアを除く)として、ハンガリーとスロバキアの中欧2国を訪れた。
 スロバキア訪問最終日の15日午前、教皇は西部サスティンの「聖母の七つの御悲しみ巡礼聖堂」でミサを捧げ、午後、ブラチスラヴァの空港で送別式に臨んだ。
 空港内で、教皇はズザナ・チャプトヴァー大統領との短い会談ののち、大統領はじめ関係者らに見送られ、特別機にてスロバキアを後に、同日15時20分過ぎにローマに到着、バチカンに向かう途中、ローマ市内の聖マリア大聖堂(サンタ・マリア・マッジョーレ)に立ち寄り、聖母子画「サルス・ポプリ・ロマーニ」(ローマ人の救いの意)の前で感謝の祈りを捧げた。


◎教皇、「自由を証しし、創造性と対話ある教会を」要望

 【CJC】教皇フランシスコはの欧州訪問の2日目の9月13日、スロバキアの首都ブラチスラヴァ市内の大統領官邸で歓迎式典に臨み、チャプトヴァー大統領や各界代表と会見。続いて、カテドラルで教会関係者とたちと会われた。
 この日、ゴシック様式の聖堂内には、スロバキア各地から司教・司祭・修道者・神学生・カテキスタたちが集まった。
 スロバキアのカトリック信者は、約339万人、全人口のおよそ73・7%を占める。国内には12の教区がある。
 教皇は参加者への言葉で、ブラチスラバの美しい城に触れつつ、しかしながら教会は高い場所から世界を見下ろす砦のようなものであってはならない、と説かれた。
 教会は福音の喜びを通して人々をキリストへと惹きつけることを願う共同体、と教皇は述べ、世俗的な偉大さへの誘惑に陥ることがないように、と注意された。
 世界や生活から距離を置くことなくその中に住む教会、分かち合い、共に歩み、人々の問いや希望に耳を傾ける教会の姿を示された教皇は、「教会の中心は、教会ではない」と話された。
 そして、教皇はスロバキアの教会が、自由を証しし、創造性をもって、対話のうちに歩むことを希望された。
 教皇は、同日午後、神の愛の宣教者会の支援センター訪問、またブラチスラバ市内のホロコースト犠牲者追悼モニュメントの前で、ユダヤ人共同体との出会いを持ち、ホロコーストの犠牲者を思い起こした。
 このモニュメントは、「ショア」(ユダヤ人大虐殺)の犠牲となったスロバキア出身の10万5000人以上のユダヤ人たちを記憶にとどめるために、かつてのシナゴーグがあった場所に建立された。シナゴーグは1969年、共産政権によって取り壊された。
 ブラチスラバは、世紀にわたりユダヤ人の生活の重要な中心地であった。しかし、1940年、ブラチスラバに約1万5000人住んでいたユダヤ人のうち、ホロコーストを生き延びた人々はわずか約3500人だった。
 この集いでは、ホロコーストの生存者1人が、家族と共に体験した恐ろしい悲劇を振り返ると同時に、当時、いかなる政治家でさえも政権に表立った批判ができなかった中で、バチカンの外交官が反ユダヤ政策を止めようと尽力していた、と証言した。
 また聖ウルスラ修道会の修道女は、迫害のさなか、同修道会はユダヤ人の子どもたちをかくまい、国外に逃がしていたことが、生存者たちの証言によって明らかにされた、と語った。
 教皇は、歴史と記憶の場所、苦しみの場所に「触れると共に、心に触れられるために」「巡礼者」として訪れた、と述べた。
 集いの終わりに、ユダヤ教の祈りが唱えられる中、ホロコーストの犠牲者を思い起こすためにろうそくに火が灯された。


◎教皇、ロマ共同体と交流、「偏見から対話へ、閉鎖から融合へ」

 【CJC】バチカン・ニュース(日本語)によると、スロバキア訪問中の教皇フランシスコは9月14日、東部のコシツエ郊外のロマ共同体を訪ねた。
 スロバキアでは最も大きいロマ共同体で、現在、推定約4300人が暮らしている。
 同地区は1970年代に主に軍関係者の居住区として建設されたが、80年代に入り、次第にロマの住民の割合が増した。
 今日の同地区の集合住宅は、建物の老朽化が著しく、ガス・水道は1日数時間しか使用できず、共同の暖房設備もない。こうした住居の問題や治安の不安もあり、多くの人々がこの地区を離れて行った。
 人々から忘れられた同地区で、修道会サレジオ会が活動を始めたのは、2008年。以来13年間、特に若者や子どもたちの育成を通して、熱心な司牧活動が続けられている。
 同地区への教皇の訪問は、人々にとって思いがけない喜びとなった。教皇は住民たちの歌や演奏による歓迎を受けられた。
 集いでは、ロマの人々が日常的に接している差別や先入観、未来への希望などを語った。
 教皇は挨拶の中で、決めつけや先入観を持つことは、人の間の距離を増すだけであると述べ、住民のゲットー化は何も解決しない、と話した。
 他者に対して閉ざすことは、怒りをかき立てるのみ、と話す教皇は、平和的共存の道は融合にある、と強調した。
 教皇は、ロマ共同体の人々に、相互の信頼を育てながら、日ごとのパンを得るための正直な仕事を通して、怖れや過去の傷を一歩ずつ乗り越え、前に進んで欲しい、と励ました。


◎十字架称賛の祝日に教皇「十字架を見つめ、証しする」

 【CJC】バチカン・ニュース(日本語)によると、教皇フランシスコは、スロバキア訪問3日目の9月14日、スロバキア東部、プレショフで、十字架称賛の祝日のミサを捧げた。
 プレショフには、ギリシャ(ビザンチン)典礼カトリック教会のエパルキア(教区)が置かれている。
 教皇はプレショフ市内のスポーツ施設で、ミサ聖祭を司式した。
 儀式は、ビザンチン典礼の伝統豊かに厳かにとり行われ、はじめに十字架の崇敬が行われた。
 説教で教皇は、十字架にキリストの愛を「見つめ」、それを「証しする」者となるようにと招いた。
 聖パウロはこのように宣言する一方で、彼は十字架が人の知恵には「つまずかせるもの」「愚かなもの」であることを隠さない。十字架は死の道具であるが、いのちはそこからやって来る。十字架は誰も見たくないものであるにも関わらず、それはわたしたちに神の愛の素晴らしさを啓示する、と教皇は述べた。
 まさにイエスがつけられた十字架の下にいて、十字架上で死んだイエスを見た福音記者ヨハネは、その出来事を伝えながら「それを目撃した者が証ししている」と記した。教皇は、聖ヨハネのように、十字架を「見つめ」「証しする」ことの大切さを示した。
 神が十字架にかかり死ぬことは、あり得ない、ふさわしくないことに思われる、と教皇は述べつつ、それでも、神があえて人間の惨めさの極みに入ることを選ばれたのは、地上のいかなる絶望した人も、その苦しみや闇や孤独の中で、神と出会うことができるようにと望まれたからである、と強調した。
 「わが神、わが神、なぜわたしをお見捨てになったのですか」というイエスの叫びは、わたしたちの苦しみをも引き受けることで、救いの叫びとなった、と説かれた。
 十字架を観想することは、次の一歩をもたらす。それは「証しする」ことである、と教皇は指摘。イエスを深く見つめるならば、イエスの御顔はわたしたちの顔に反映され、イエスの考えはわたしたちのものとなり、イエスの愛はわたしたちをとらえ、わたしたちを変容するようになるだろう、と話された。
 そして、スロバキアの歴史の中で、困難を極めた時代にもキリストの愛を証しし、信仰を表した殉教者たちを思い起こされた教皇は、今日、社会の状況は変わっても、十字架ははっきりとした信仰の証しをわたしたちに求めている、と呼びかけた。


◎バチカンがブラジルの宣教会『福音の使者』に寄宿学校閉鎖を指示

 【CJC】カトリック紙『ラクロワ』報道によると、バチカンが、子どもたちや青少年を心理的・性的暴力の可能性から守るために、ブラジルの保守的宣教会『福音の使者』(仮訳)に運営している寄宿学校を閉鎖するよう指示した。
 この決定は、6月22日にジョアン・ブラズ・ジ・アビス枢機卿(奉献・使徒的生活会省長官)が署名した書簡で『福音の使者』に伝えられたもの、と伊カトリック紙『アディスタ』が9月10日明らかにした。
 今回の閉校決定は、『福音の使者』に子どもを預けていた親たちからの「情報」や「苦情」がバチカンに寄せられたのを受けてのもの。
 『福音の使者』は、教皇フランシスコの改革指向に反対している保守派宣教会で、その教理理解や活動方針などに疑義を持たれたことから、運営監督のため「管理者」を送り込まれた経緯がある。


◎ニューヨーク州のワクチン接種、宗教上免除主張で義務化停止

 【CJC】新型コロナウイルスのワクチンを巡り、宗教上の理由から接種に反対するカトリックとバプテストの医療関係者17人がニューヨーク州を相手に義務化の差し止めを求めた訴訟で、司法当局は9月14日、医療従事者が宗教上の免除を主張した場合は義務化を一時的に停止するとの仮処分命令を出した。米メディアCNNが15日報じた。
 訴状によると、原告は医師9人と看護師5人のほか、リハビリテーション・セラピストたち。ニューヨーク州が求めた接種義務化を「違憲で非合法だ」と主張。「義務化は、恐怖と不合理な雰囲気の中でなされた決定だ」とも指摘している。
 接種義務化に関する議論はここにきて活発化。医療関係者や多くの政府関係者は、米国民を守り、コロナウイルスの拡散を遅らせるためにもワクチンの接種は必要な措置だとの見解を表明している。


◎ワクチン接種しないと誓った米保守系ラジオ司会者、コロナ合併症で死去

 【CJC】米報道サイト「CNNビジネス」によると、新型コロナウイルスワクチンを接種しないと誓っていた米保守系ラジオ司会者で牧師のロバート・エンヤート氏が、新型コロナの合併症のため死去した。番組のフレッド・ウィリアムズ氏が13日、SNSで明らかにした。
 両氏のラジオ番組のウェブサイトでは先月、新型コロナ感染症に関する更新があり、エンヤート氏と妻が「ファイザー、モデルナ、ジョンソン・エンド・ジョンソン製ワクチンの接種をしないと誓った」ことが明らかにされていた。
 米国ではこのところ、マスクに不満を示したりワクチンに懐疑的な見方を表明したりしていた保守系ラジオ司会者がコロナ合併症で亡くなる例が相次いでいる。


◎スイス政府、妊婦へのワクチン接種を勧告

 【CJC】スイス連邦政府の新型コロナウイルス感染症専門家会議は9月14日、妊娠中の女性について、妊娠後期に新型コロナのワクチンを接種するよう勧告した。スイス公共放送協会(SBC)の国際部「スイス・インフォ」(日本語版)が紹介している。
 妊婦はこれまでもワクチン接種を受けることができたが、事前に医師の診察を受け、同意書に署名する必要があった。今後はその必要がなくなる。
 連邦予防接種委員会のクリストフ・ベルガー委員長は、授乳中の女性や妊娠を計画している人にも勧告すると述べた。
 ベルガー氏は、ワクチン接種の利点が重症化のリスクを上回ることを示すデータが蓄積されていると説明し、妊娠中の女性は感染すると重症化して入院したり、集中治療室に入ったりする危険性や、流産のリスクが高まると話した。
 ベルガー氏は、新型コロナのワクチン接種を受けた約15万人の妊婦の安全性に懸念事項はなかったという米国の報告データも提示し、英国、フランス、そして最近ではドイツでもワクチン接種が推奨されていると強調。ワクチンが女性や男性に不妊症を引き起こすという証拠はないとも述べた。


◎マカオの聖ポール大学跡で人工穴遺跡が一般公開

 【CJC】マカオ政府文化局は、9月15日から高園街大坑遺跡保護展示区の一般公開を開始した。邦字メディア『マカオ新聞』が報じた。
 保護展示区の位置はマカオ半島の歴史市街地区内、マカオの著名な世界遺産「聖ポール天主堂跡」のすぐ後方で、かつてカトリック・イエズス会による聖ポール大学(聖保禄学院)があったとされる場所。
 2010年から12年にかけて文化局と中国社会科学院考古研究所が合同発掘調査を行った際、深さ9・8メートル、直径約5・8メートルの岩盤を掘って人工的に造られた大穴が見つかり、明朝末期から清朝初期(16世紀後半から17世紀中頃)に海外へ輸出された磁器の断片や建築部材などが出土した。当時、マカオが海洋シルクロードの重要な中継港、貿易拠点としての役割を果たしていたことを考古学的に証明する重要な遺跡として評価されている。
 今回一般公開された保護展示区では、大穴とともに、発掘作業の様子や出土品に関する展示パネルを見ることができる。


◎汝矣島純福音教会を創設した趙牧師死去

 【CJC】韓国の聯合ニュース報道によると、ソウルの汝矣島純福音教会の創設者、趙鏞基(チョー・ヨンギ)牧師がソウルの病院で9月14日死去した。85歳だった。昨年から脳出血の治療を受けていた。
 1956年、純福音大学で神学を学んだ趙牧師は58年卒業後、ソウル北西部に天幕教会を開き、その後、汝矣島に移転し、70万人以上の信者を持つ汝矣島純福音教会を育て上げた。
 趙牧師は、教会以外にも多くの社会活動を行った。
 1988年、新聞「国民日報」を創刊、人権、環境、児童福祉のための非政府組織「グッドピープル」を設立した。
 趙牧師の夢の一つは、北朝鮮に心臓病院を建設することだった。
2007年に平壌で起工式が行われたが、この200億ウォン(約18億円)規模のプロジェクトは、2010年以降の南北関係悪化により中断している。
 教会によると、葬儀は18日に汝矣島純福音教会で。


《メディア展望》
 
 =カトリック新聞(9月19日)=https://www.cwjpn.com/cwjpn/
「共に歩む旅路へ」=シノドス準備文書でバチカンが指針示す
教皇、ハンガリーを訪問=国際聖体大会閉会ミサを司式=聖体礼拝で「自分」から脱却
「違った生き方を選ぶ」=教皇ら3教会指導者=世界に共同メッセージ=国連気候変動会議を控えて
オンラインで開催=日韓脱核平和巡礼と懇談会=原発汚染水の海洋放出に注目
中央協から邦訳刊行=回勅『兄弟の皆さん』
 
 =KiriShin(9月11日・既報)=https://www.kirishin.com
 
 =クリスチャン新聞(9月19日)=https://クリスチャン新聞.com
日本ローザンヌ委=起業育成部門創設と組織更改へ=「多次元」共生の宣教協力
あの時の沈黙を悔い改め=関東大震災朝鮮人虐殺から98年
「罪責告白が生まれ変わる契機」と徐正敏氏=「罪を告白し預言的使命を」=関東大震災第98回記念 =追悼 合同早天礼拝
「香港牧師ネットワーク」解散=「政治的圧力受けやむなし」=「生活の中で継続願う」
WCC、WEAが協力を強化=平和構築、気候変動、国連協力など緊密に

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