世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1653信(2022.09.26)

  • 「自然に優しい、平和の経済、いのちの経済を」=教皇、経済をめぐる若者たちのミーティングへアッシジ訪問
  • 教皇、イタリア・マテーラで聖体大会閉会ミサ
  • "ロシア軍が司祭を拉致して拷問"とウクライナ正教会大主教=NHK
  • ロシアは「国連憲章違反」、バイデン氏が非難「無責任な核の脅し」とも
  • ロシア、部分動員令への抗議デモ続く 拘束者2000人超える
  • ウクライナ侵攻よそにスイスへ押し寄せるロシア人観光客
  • 《メディア展望》

 

◎「自然に優しい、平和の経済、いのちの経済を」=教皇、経済をめぐる若者たちのミーティングへアッシジ訪問

 【CJC】教皇フランシスコは9月24日、イタリア中部アッシジで開催されたミーティング「フランシスコの経済」の最終日に参加、新しい経済のあり方を目指す若者たちに助言と励ましを与えた。
 経済をテーマにしたこのミーティングは、教皇フランシスコが2019年、世界各国の若いエコノミストや起業家、経済を専攻する学生、社会や共同体のために独自の経済活動を試みる若者たちを、環境、持続性、貧困問題、正義、平和などの広い観点を持った包括的な経済の考察へと招いたことを起点に始まった。
 20年3月、アッシジで予定された最初のミーティングは、パンデミックの影響のため、11月に延期してオンライン形式で行われた。
 2年後の今年、第2回のミーティングが、アッシジの会場に世界のおよそ100カ国の若者たちの直接参加を得て開催された。
 24日朝、ミーティング会場「テアトロ・リリック」に到着した教皇は、さっそく参加者らとの交流に入った。
 舞台では、イザヤ書の「見張りの者よ、今は夜の何どきか」「夜明けは近づいている、しかし、まだ夜なのだ」(参照:イザヤ12・11~12)という言葉を表現した「夜から夜明けへ」をテーマにしたパフォーマンスが行われ、続いて、アフリカ、南米、アジア、ヨーロッパ出身の若者たちが、それぞれを取り巻く環境、得た経験、これからの目標や夢を語った。
 教皇は参加者への言葉で、「今日、環境危機、パンデミック、ウクライナや各地における戦争など、若い皆さんが生きるこの時代は決して容易ではない。われわれの世代は皆さんに豊かな遺産を残したが、地球を保護し、平和を保ち続けることはできなかった」と話した。
 「皆さんは『共通の家』、その『崩れかけた家』を築き直す人となるよう呼ばれている」と教皇は述べ、「アッシジの聖フランシスコからインスピレーションを得た新しい経済は、今日、自然に優しい、平和の経済、『殺す経済』ではない『いのちの経済』となるべき」と語られた。
 そして、教皇はその新たな経済に必要とされる側面として、環境との調和、搾取などによって破壊されたものを元どおりにするという普遍的倫理、そして多面的な持続性を挙げた。
 教皇は、「貧しい人の叫びと大地の叫びは、同じ叫びである」と述べ、環境問題への解決は、人々の貧しさや不平等を減らし、苦しむ人々に配慮するものでもあるべき、と話した。
 また、教皇は今日の人間関係の貧しさを指摘。特に家庭の危機によって、人々はいのちを迎え入れ、守ることに困難をきたし、消費主義が人々の孤独や心の空虚を満たそうとしているが、それは「幸福の飢餓」を招くだけである、と説いた。
 さらに、教皇は、社会や経済における精神性の重要さを強調。すべての人間は生きるための意味を求めているが、それは経済生活にも同様のこと、と述べ、これまで宗教や伝統によって育まれてきた社会の「精神的な資本」を現代世界は猛烈なスピードで消耗させ、若い人たちは今、意味の欠如に苦しんでいる、と語った。
 教皇は、アッシジの聖フランシスコの清貧、貧しい人々への愛に触れながら、貧しい人々を中心に据え、貧しく弱い立場の人たちへの尊重と愛といたわりのある経済を目指すよう、若者たちを励ました。
 このような考察を踏まえながら、教皇は新しい経済を構想する若者たちに「貧しい人々の視点で世界を見る」、「労働と労働者の大切さを忘れない」、「考えや希望を具体的な形にする」の三つの点を助言した。
 そして、教皇は「善」と「いのち」を望む若者たちの歩みを支えてください、と神に祈った。
 ミーティング終了にあたり、若者たちは新しい経済構築のための目標を提示。この「約束」を記した文書に、若者たちの代表としてタイの環境保護活動家、リリー・ラリン・サティッタナーサーンさんと、教皇が署名を行った。
 アッシジの集いに参加した世界の若いエコノミスト、企業家、チェンジメーカーたちは、この「約束」の中で、今日と未来の経済が「福音の経済」となるよう、個人として、そして皆と一致して、人生を捧げたいと記している。
 そして、この「福音の経済」が具体的にどういうものであるか、それを以下のように目標として示している。
 戦争ではなく、平和の経済- 被造物を搾取せず、いたわる経済
 人、家族、いのちに奉仕し、すべての女性、男性、子ども、高齢者、特に最も弱い立場の人々を尊重する経済
 排除や無関心をケアに置き換える経済
 誰も置き去りにせず、主流のメンタリティーから捨てられた石が隅の親石となる経済
 女性をはじめ、すべての人に尊厳ある安全な仕事を認め、守る経済
 金融が現実の経済と労働の敵ではなく、友、味方となる経済
 わたしたちの文化と伝統、地球のすべての生態系と天然資源を価値づけ守る経済
 あらゆる形の貧困と戦い、不平等をなくし、「貧しい人々は幸い」と言える経済
 人の倫理に導かれ、超越性に開いた経済
 皆のための豊かさを生み出し、より良い生活だけでなく喜びをもたらす経済、なぜなら分かち合えない幸福は、十分ではないからである
 若者たちはこのように目標を掲げ、さらに文書の終わりの部分に、「こうした経済はユートピアではない、なぜなら構築中だから」と記している。


◎教皇、イタリア・マテーラで聖体大会閉会ミサ

 【CJC】バチカン・ニュース(日本語版)によると、教皇フランシスコは9月25日、イタリア南部マテーラで行われた第27回イタリア全国聖体大会の閉会ミサの後半、「お告げの祈り」を唱えた。
 教皇はこの聖体大会の閉会にあたり、生ける聖櫃、おとめマリアにイタリアの教会の歩みをゆだねると共に、世界に緊急に必要とされる課題をその取り次ぎに託した。
 特に2年以上にわたり武力衝突や暴力に苦しめられ、多くの犠牲者や避難民を出しているミャンマーに思いを向けた教皇は、数日前の学校への空爆で犠牲となった子どもたちを悼んだ。
 そして、これらの子どもたちの叫びが聞きすごされることがないようにと祈ると共に、このような悲劇は決して起きてはならない、と強調した。
 また、教皇は苦しむウクライナの人々に慰めを、国々の責任者らに戦争終結に導く有効な手段を至急模索する強い意志を与えてくださいと、「平和の元后マリア」に祈った。
 さらに、教皇はカメルーンのマムフェ教区で拉致された人々の解放を同国の司教団と一致して呼びかけた。この中には5人の司祭と1人の修道女が含まれている。教皇は同様にバメンダの教会管区の人々のために、またカメルーンの人々の心と社会生活に、平和の賜物を神に祈り求められた。
 最後に、教皇はこの日カトリック教会の「世界難民移住移動者の日」(テーマ:移民や難民とともに未来を作る)が記念されたことに触れ、移民・難民・避難者・人身取引の犠牲者らが平和と尊厳のもとに生活できる、すべての人が自分の居場所を見出し、尊重される未来の構築を励ました。
 聖体大会は、聖体に対する信心を高めることを目的とする集会。各国の教会が催す国内レベルの大会と、開催国を変えて4年ごとに行われる国際レベルの大会がある。
 イタリアのカトリック教会は、22日からマテーラで第27回全国聖体大会を開催。そして25日、教皇と共に捧げた閉会ミサによって同大会を終了した。
 この朝、マテーラのスタジアムでとり行われた聖体大会閉会ミサには、全イタリアの各教区から使節や巡礼団が参加した。
 教皇はミサの中で、この日曜日の福音朗読箇所、ルカ福音書の「金持ちとラザロ」(ルカ16・19~31)のたとえを取り上げ、説教した。
 このたとえでは、ある金持ちがいつも贅沢な衣を着て、富を誇示し、遊び暮らしていた。一方、この金持ちの門前には、ラザロというできものだらけの貧しい人が横たわり、金持ちの食卓から落ちる物で空腹を満たせるものならばと思っていた。
 教皇は、このたとえの深刻な対比を前に、聖体の秘跡とキリスト教生活はわたしたちを何に招いているかを考えられた。
 まず聖体は「神を第一に置くこと」を思い出させてくれると教皇は述べ、これに対し、たとえの中の金持ちは神との関係に自らを開かず、世俗的な富を追い求め、自分の楽しみと満足だけを考えていたと指摘、聖体がキリスト者の生活に与える常なる課題は、「自分自身ではなく、神を拝むこと」であり、「自分の虚栄ではなく、神を中心に据えること」と話した。
 自己を崇拝するならば、わたしたちは小さな自我の中で窒息し、この世の富を崇めるならば、その富はわたしたちを捉え、奴隷化するだろう、と教皇は語った。
 これに対して、聖体の中に現存される主イエスを礼拝するならば、新しい眼差しを授けられ、自分は神に愛され祝福された子であり、神は自分にあらゆる隷属からの解放を望まれていることに気づくだろう、と教皇は話し、「神を礼拝する者は、誰にも隷属することがない」と強調した。
 また、聖体はわたしたちを「兄弟愛」へと招いている、と述べた教皇は、「聖体の秘跡は愛の秘跡」であり、キリストは自らを割いて分け与えながら、わたしたちにも兄弟たちに同じようにすることを願われる、と話した。
 たとえの中の金持ちは、貧しいラザロの声なき叫びに気づこうともせず、贅沢に遊び暮らしていたことから、死んでから陰府でさいなまれ、アブラハムに助けを求めても、「わたしたちとお前たちの間には大きな淵がある」(参照=ルカ16・26)と答えられることになった、と教皇は語った。
 そして、今わたしたちが兄弟たちとの間に掘る溝は、後々のために掘っている溝なのだ、と警告した。
 このたとえと同じストーリーが今日の世界に見られることは非常に悲しいことと教皇は述べつつ、それに対し、聖体は新しい世界の預言として、わたしたちを無関心から憐みへ、無駄から分かち合いへ、利己主義から愛へ、個人主義から兄弟愛へと招いている、と説いた。


◎"ロシア軍が司祭を拉致して拷問"とウクライナ正教会大主教=NHK

 【CJC】来日しているウクライナ正教会のエフストラティ大主教は9月20日、NHKの取材に対して、ロシア軍が占領地域で司祭を拉致したり拷問したりしていると非難したうえで、一刻も早く平和が訪れるようロシア正教会の聖職者たちも軍事侵攻に反対する姿勢を示すべきだと呼びかけた。
 エフストラティ大主教は、宗教関係者の国際会議に出席するため来日、20日、東京都内でNHKの取材に答えた。
 エフストラティ大主教は「占領されたへルソン州では、司祭が拉致されたうえに拷問を受け、ロシアの情報機関への協力を求める文書に署名するよう強制された」と述べ、ロシアによる軍事侵攻の被害は宗教の面にも及んでいると非難した。
 また、プーチン大統領に近いとされるロシア正教会のキリル総主教などが、軍事侵攻を支持していることについて「ロシアは、何世紀も正教会を帝国主義の道具のように使ってきた。私たちは、特定の政治家や個人は支援しない」と述べ、宗教が戦争の正当化に利用されないよう、政治と宗教は一定の距離を保つべきだという認識を示した。
 そのうえでエフストラティ大主教は「一刻も早く平和が訪れるよう宗教指導者こそ声を上げるべきだ」と述べ、ロシア正教会の聖職者たちも軍事侵攻に反対する姿勢を示すべきだと呼びかけた。


◎ロシアは「国連憲章違反」、バイデン氏が非難「無責任な核の脅し」とも

 【CJC】ニューヨーク国連本部発ロイター通信によると、バイデン米大統領は9月21日、国連総会の一般討論演説で、ロシアのウクライナ侵攻は国連加盟の基本理念に反していると非難し、ロシアが核を使用するという「無謀」で「無責任な」脅しをかけているという認識を示した。
 バイデン大統領は「国連安保障理の常任理事国が隣国を侵攻し、主権国家を地図から抹消しようとしている。ロシアは臆面もなく、国連憲章の中核的な教義に違反した」と非難。「この戦争はウクライナの国家としての生存権を消し去り、ウクライナ国民の生存権を奪うものだ」とし、国籍や信条などにかかわらず、「こうした行動に対し戦慄を覚えるだろう」と語った。
 ロシアのプーチン大統領は21日、ウクライナでの戦争侵攻に絡み、軍の部分動員令に署名したと明らかにした。西側が「核の脅し」を続けるなら、ロシアは兵力の全てを用いて対応するとも警告した。
 バイデン大統領は「今日もまた、プーチン大統領は欧州をあからさまに核によって脅かした」とし、「核戦争に勝者はなく、決して戦ってはならない」とけん制した。


◎ロシア、部分動員令への抗議デモ続く 拘束者2000人超える

 【CJC】ロイター通信(日本語版)報道によると、ロシアでは、プーチン大統領がウクライナ侵攻を巡り9月21日に出した部分動員令への抗議デモが全土で続き、治安当局による拘束者は2000人を越えた。招集兵の戦地派遣が始まる中、状況を悲観した国民がフィンランドやジョージアなどを目指す動きも見られる。
 政府系メディアからも批判的な声が上がる。国営放送RTのある編集者は、招集令状が対象条件と合致しない男性に送られるといった問題が「人々を激怒させている」と指摘した。
 ロシア国防省は23日、「特定のハイテク産業や金融システムの稼働を保証する」ため、重要産業で働く人の招集を免除すると表明。IT、電気通信、金融のほか、「システム上重要な」報道機関などが対象とされている。


◎ウクライナ侵攻よそにスイスへ押し寄せるロシア人観光客

 【CJC】スイス公共放送協会(SBC)国際部が、世界に向け政治的または経済的利益から独立した立場で行っているSWI(日本語版)によると、独語圏の日曜紙NZZ・アム・ゾンタークが9月18日、自国が戦争中でもロシア人が旅行を止めるわけではないようだ、と報じた。
 スイス政府観光局のデータによると、ロシア人がスイス国内のホテルに宿泊した件数は7月末時点で6万1214件に上った。また同紙によると、スイスが今年、ロシア国民に対して発給したビザは9000件超となった。ホテルの平均宿泊日数は3泊強と、他のどの観光客グループよりも長い。
 観光業界は、かつて大歓迎していたロシア人観光客から距離を置きつつある。国内旅行最大手STCは現在、ロシアからの予約を受けつけていない。だが同紙は、富裕層のロシア人は制裁下でもスイスへの休暇旅行ができる状態にあると報じている。
 連邦政府は16日、ロシア国民に対する簡易ビザの発給停止を決定。欧州連合(EU)の措置に追従した。
 ロシアによるウクライナへの侵攻後、スイスは一貫してEUの制裁措置に足並みを揃えてきた。スイスの金融機関はこれまでロシア資産の退避先となっていたほか、スイス拠点のロシア企業も多く存在した。


《メディア展望》
 
 =カトリック新聞(9月25日)=https://www.cwjpn.com/cwjpn/
▼エリザベス英女王死去=教皇ら教会指導者も弔意
▼札幌教区=ベトナム人カトリック青年=初めて大会開き、交流=全道から100人が参加
▼長崎教区=「元和の大殉教」400周年記念祭=殉教者の信仰しのぶ
▼教皇の一般謁見講話=予期せぬことから識別へ
▼世界難民移住移動者の日=教皇、メッセージで移民政策の改革求める
 
 =KiriShin(9月21日)=https://www.kirishin.com
▼検証=〝協会〟の実相と教会の課題(3)=先人による「原理運動」への警鐘=(弁護士・河田英正さん)
▼エリザベス英女王逝去=チャール国王即位を正式宣言
▼NBUS「憂慮する」会に1万8000筆=「第三極」の試みも
▼安倍元首相の「国葬」に同盟教団、NCC靖国委が抗議
▼学校人権教育研究協議会=五つの要請文・声明を採択
 
 =クリスチャン新聞(9月25日)=https://クリスチャン新聞.com
▼森祐裡さんウクライナ現地を訪問=日本への伝言「ただ平和であって」
▼香港を覚えての祈祷会=互いの無関心をこえた=厳しい情勢下でも宣教協力進む
▼LGBT論「第三極」対話模索=福音派有志=「ドリームパーティー」設立
▼「国葬反対」声明相次ぐ
▼「止揚学園」設立者=福井達雨氏逝去

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