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研究活動

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書評「キリスト新聞社年鑑編集部編『キリスト教年鑑――2000年版』」、『キリスト新聞』2000年1月1日号

 『キリスト教年鑑』が三分冊の形式を取りはじめて四年経つが、それもかなり板に付いてきた感じがする。もっとも、それはマンネリ化してきたという意味ではなく、それぞれの分冊が「顔」を持ち始めてきた、と言っても良い。各分冊に収録されてきたジャンルは、細かく見れば、変化してきているが、それも試行錯誤の結果として評価することができる。2000年版は『年鑑』『人名録』『記録・特集』の三冊によって構成されている。それぞれが、どのような「顔」を持っているか見てみよう。

 『年鑑』はキリスト教に関連する膨大な情報を網羅的に収録した、まさに『キリスト教年鑑』の正面の顔と言える。これまで教会に関しては、教会名・住所・牧師名などしか掲載されておらず、かなりそっけない面もちだったのだが、2000年版には今まで見たことのない要素が追加されているではないか。そう思って、中扉の説明をよく読むと、教会堂の有無、外国語の礼拝の実施、教会設立年、最寄り駅、URL、e―MAILアドレスが新規に掲載されたとある。未回答・掲載不可の教会があるので、すべてが記載されているわけではないが、これはかなり大きな変化である。「最寄り駅」などは、これまでなかったのが不思議なくらいだが、きわめて有用な情報である。ただし、全体をざっと見渡しても、電子メール・アドレスやホームページを開示している教会はきわめて少数である。実際には、教会ホームページは急増しているので、来年の『年鑑』にはそれが反映されるかもしれない。

 そのようなことを考えながら、『人名録』を見ていると、こちらの方は電子メールの所持者がかなり目に付く。キリスト教界にも着実に情報化の波が押し寄せていることを感じさせられるが、同時に、現在1800頁にも及ぶ『キリスト教年鑑』も一枚のCD―ROM(DVD)に収められる日がそう遠くないことを連想する。

 『記録・特集』は趣のある「横顔」のような存在感を放っている。2000年版では、新ガイドライン関連法案や「日の丸・君が代」法制化反対の声明が多数掲載されている。いずれも、わたしたちが不可避的に次世紀へと持ち越さねばならない課題であり、そのことをあらためて想起させてくれる資料群となっている。また、特集として、脳死・臓器移植に関する論考と、先の資料に見られる右傾化法案に対する論考が掲載されている。両者とも、内容的にすぐれているだけでなく、よい問題提起となっている。近年、この二つのテーマが世論をにぎわせてきたが、キリスト者は世論を後追いするだけでなく、積極的に信仰者ならではの視点を付加していくべきであろう。そのような作業を支える一助として『記録・特集』は、一つの時代の全体像を大づかみにさせてくれる。

 情報が多すぎて右往左往させられる時代であるからこそ、確かな情報源を手元に置いておきたいと思う。『キリスト教年鑑2000年版』は、そのような期待に応えてくれる一冊なのである。