研究活動

研究活動

研究発表「「日本宗教史」の教え方──特に一神教の論じ方と関連して」、日本宗教学会 2011年度学術大会、パネル「「日本宗教史」を大学でどのように教えるか」、関西学院大学

※以下は当日の配付資料

1.シラバス(一部抜粋)
1)宗教学5「日本文化の中の宗教──古代からグローバル時代に至る宗教のポリティクス」
<概 要>
 この授業では,日本宗教の成り立ちやその基本的な思想・世界観を学びます。その際,古代世界からグローバル世界までを時代背景として,日本宗教が文化や政治とどのような相互関係にあったのかを考えていきます。
 みなさんは日本の宗教について,どの程度知っているでしょうか。たとえば,客人のために京都・奈良観光をすることになったと考えてみてください。八坂神社,北野天満宮,東大寺などに客人を連れて行くことはできるでしょう。しかし,そこでそれぞれの観光地(宗教施設)を眺める以外に,みなさんはどのような歴史的・宗教的知識を語ることができるでしょうか。神社仏閣は,それが根ざしている宗教的伝統をシンボライズしたものです。日本宗教についての基礎知識を身につけることによって,みなさんは,身の回りにある歴史的建造物や芸術について,より深く理解し,また語ることができるようになるはずです。
 この授業では伝統的な日本宗教として,神道,仏教,儒教,道教,民俗宗教を取り上げます。仏教,儒教,道教は中国・朝鮮半島経由で日本に入ってきた外来宗教ですが,それ以前にあった日本の土着の伝統と相互に影響を及ぼし合いながら,日本宗教の多様性と一体性を形成してきました。また,古代世界の頃から,宗教は共同体や社会と深い関係を持っています。仏教が国教的役割を果たした時代もありました。宗教の教えの側面だけでなく,宗教のポリティクスについても,この授業では重点的に扱っていきます。
 明治期以降,日本社会は欧米の視線を強く意識することになり,それは日本宗教にも大きな影響をもたらしました。キリシタン弾圧以降,キリスト教との再度の接触も,この時期に本格的に始まります。この授業では,日本宗教を一国史の中で自閉的に語るのではなく,世界史的な比較の視点を導入していきます。
 キリスト教をはじめとする一神教の伝統は,日本宗教とはかなり異なる性格を持っています。しかし,そうした一神教の歴史観や自然観をも視野に入れることによって,日本文化に根ざした歴史観や自然観を,より客観的に見ることができるようになります。この授業では,そうした比較宗教学視点を通じて,そもそも「宗教」とは何なのか,ということについても理解を深め,グローバル社会における日本宗教の語り方を考えていきます。
 現代の日本社会は,あまり宗教的ではないと言われます。しかし,その一方で,霊魂やあの世(来世)の存在は当たり前のように受けとめられています。たとえば,日本の漫画やアニメには,しばしば日本の伝統的宗教観が反映されています。授業では漫画やアニメなども素材として利用していく予定です。

2)Introduction to Japanese Religion(※ international students 向けのコース)
Course Description
This course is designed to introduce students to the history, teachings and practice of Japanese religions. It requires no prior knowledge of the topic. We shall examine the Japanese religious landscape from a variety of perspectives, paying particular attention to the issue of how multiple traditions have continued to coexist in Japan.
This course will be dealing with representative Japanese religions such as Shinto, Buddhism, Confucianism and folk religions. At the same time we will compare Japanese religions with world religions including Christianity to get a comparative perspective of religion in the world history. It has been often said that the contemporary Japanese society is not religious, rather very secular, but in reality most of the Japanese people take the existence of spirits, ghosts and the afterworld for granted. Japanese popular culture, especially manga and anime, reflects such tendency in the unique way. In order to gain insight into the hidden religiosity, we will be looking at some representative manga and anime from the perspective of religious studies.

2.授業の特徴(配慮している点)
1)宗教は「怪しい」「危ない」「理解不能」といった先入観をできるだけ取り除く(アニメ・マンガの利用)。
2)身近な神社仏閣を訪ねてみたくなるようなインセンティブを与える。
3)世界史的・アジア史的な文脈の中で、日本宗教の特徴を理解する。特に、一神教との比較を行うことによって、諸宗教に対する単純な優劣意識(一神教 vs 多神教など)を持たないようにすると同時に、宗教の普遍性やグローバルな課題にも目を向ける。
4)国外で活動している日本宗教(仏教や新宗教)の実情や課題を紹介し、国際社会における日本宗教の役割を考える。
5)海外で日本宗教を英語で説明できるように、講義におけるキーワードは日英を並記する。
6)日本宗教を教えや儀礼の側面からのみとらえるのではなく、文化や政治力学(宗教と国家、宗教と戦争、政教分離等)との関係の中で理解する。
7)国際学生に対しては、彼ら・彼女らの宗教的背景を考慮し、また、それとの比較を通じて、日本宗教や日本人の宗教観について説明する。

【参考】小原克博 On-Line(https://www.kohara.ac):Educationの項目に授業資料あり。