世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1577信(2021.04.12)

  • ハンス・キュンク神父死去、教皇の無謬性に関する見解で物議
  • 北アイルランドで連日暴動、10日間で警官70人以上負傷
  • ハイチでカトリック教会の聖職者7人誘拐される
  • ブラジル南部で新たなキリスト像の建設進む
  • カラバッジョの失われた傑作か、スペイン政府が競売を阻止
  • 《メディア展望》

 

◎ハンス・キュンク神父死去、教皇の無謬性に関する見解で物議
 【CJC】スイス出身の司祭、神学者、作家のハンス・キュンク神父が4月6日、ドイツ南西部チュービンゲンの自宅で死去した。93歳。同神父が創設し、会長・名誉会長を務めた「グローバル・エシック・ファウンデーション」がフェイスブックで明らかにした。死因は伝えられていない。晩年はパーキンソン病で公の場に姿を見せることはなかった。ロンドンに本拠を置く「独立カトリック・ニュース」(ICN)の報道などを紹介する。
 1928年3月19日にスイスのズールゼーで生まれたキュンク神父は、教皇ヨハネ・パウロ2世や教皇ベネディクト16世を最も鋭く批判した人物の1人。声明や著書の中で、司祭の独身義務、女性司祭の禁止、改革への抵抗、秘密主義、透明性の欠如、女性蔑視など、バチカン批判を展開した。
 1960年代にチュービンゲンで教皇ベネディクト16世、当時のジョセフ・ラッツィンガー神父と一緒に働き、学んだ経験がある。ラッツィンガー神父とともに、1962年から65年にかけて開催された第2バチカン公会議では、司教団に助言を与える最年少の神学専門家の1人であったが、公会議後間もなく、教皇の無謬性についての見解を示し、物議をかもした。
 そのため、1979年にバチカンからカトリック神学教授の免許資格「ミッシオ・カノニカ」を取り消され、カトリック大学でカトリック神学者として教えることができなくなった。以後、チュービンゲン大学でエキュメニカル(キリスト教一致運動)神学の教授を務め、1996年に退職した。
 ラッツィンガー枢機卿がローマ教皇に着座した数カ月後の2005年、ラッツィンガー枢機卿とキュンク神父は、ローマ郊外カステル・ガンドルフォで数時間一緒に過ごしたという。バチカン報道官によると、教皇とキュンク神父は「この会談の場では、教義上の問題について議論することは意味がないということで合意した」という。その代わりに、キュンク神父の最近の研究テーマである、すべての宗教的伝統を取り入れた「グローバルな倫理」を発展させる可能性と、キリスト教信仰と科学の間の対話の二つに焦点を当てた。
 2011年に引退した後、チュービンゲン大学に「グローバル・エシック・ファウンデーション」を設立し、「宗教間の平和がなければ、国家間の平和もない」という確信を示した。
 2019年、資格免許「ミッシオ・カノニカ」取り消し40周年を迎えたキュンク神父は、ドイツのカトリック・メディアに、教皇フランシスコと手紙のやりとりをして、教会法上は非公式に回復されたと感じている、と語った。
 邦訳書に『公会議に現われた教会』(1966年、エンデルレ書店)、『ゆるぎなき権威』(1973年、新教出版社)、『教会論』上・下(1976・77年、新教出版社)、『フロイトと神』(1987年、教文館)、『世界諸宗教の道――平和をもとめて』(2001年、世界聖典刊行協会)、『キリスト教思想の形成者たち』(2014年、新教出版社)、『キリスト教は女性をどう見てきたか』(2016年)などがある。


◎北アイルランドで連日暴動、10日間で警官70人以上負傷
 【CJC】英メディアBBC報道によると、英国と北アイルランドの各地で暴動が10日連続して発生、警官70人以上が負傷し、市民10人が逮捕された。4月7日夜の暴動は北アイルランドで近年最悪の規模だったとされ、8日にも主要都市ベルファストなどで暴徒が警察に火炎瓶や石などを投げつける騒ぎになった。
 騒乱が最初に起きたのは3月29日で、北アイルランド北西部でアイルランド国境に近いロンドンデリーでのこと。その後は、ほぼ毎晩のように衝突がベルファスト、キャリックファーガス、バリーメナ、ニュートンアビーなどに拡散。4月7日夜にはベルファスト西部で、主にプロテスタント派のイギリス帰属派の住む地区と、主にカトリック派のアイルランド統一独立派の地区を分ける、俗に「平和の壁」と呼ばれる壁の周辺で、帰属派と独立派の対立に拡大した。
 英国とアイルランド両国首相は電話会談を行い、共に相次ぐ暴力を非難した。北アイルランド自治政府は8日、騒乱を「直ちに完全に終わらせるよう」呼びかけた。
 特定の組織が暴動を組織的に主導している明確な動きは見られていないが、騒ぎの多くは、英国帰属支持派の準軍事組織とつながりのあるギャング集団が影響力をもつ地域で起きている。ベルファスト西部では7日夜、英国帰属派とアイルランドとの統一独立を希望する派が接触する通り周辺で乱闘があり、警官8人が負傷。市バスが1台燃やされた。
 8日夜にも騒ぎが続き、地元警察は6年ぶりに放水車を使って鎮圧した。警察によると8日夜には、警官19人が負傷。連夜の騒乱で負傷した警官は74人になったという。
 アイルランドのミホル・マーティン首相は、ボリス・ジョンソン英首相と電話で連日の騒乱について協議したことを明らかにし、「対話と、ベルファスト合意(北アイルランド紛争に関する和平合意)の機構を活用することが、前進のための道筋だ」とコメントした。


◎ハイチでカトリック教会の聖職者7人誘拐される
 【CJC】ハイチ共和国中央部にあるクロワ・デ・ブーケで、4月11日、少なくとも7人のカトリック教会の聖職者が誘拐された。中には、フランス人2人が含まれているという。現地教会の司祭がAFP通信に対し明らかにした。
 司祭によれば、犯人は100万ドル(約1億973万円)の身代金を要求しているという。警察は地元で活動を行っている武装勢力が関与している可能性があると見ている。
 AFP通信によれば、フランス大使館は、この事件について、現時点では声明を出していない。
 この数カ月、ハイチの首都ポルトー・プランスとその近郊では、身代金目的の誘拐事件が多発しており、そのことは、国内における武装集団の影響力が強まっていることによって証明されているという。


◎ブラジル南部で新たなキリスト像の建設進む
 【CJC】ブラジル南部リオグランデドスル州エンカンタード市で、巨大なキリスト像の建設が進められている。2019年に着工し、4月初旬、頭部と左右に広げた両腕が取り付けられた。AFP通信が報じた。台座を含む高さは43メートル、手から手までの長さは36メートルで、内部にはエレベーターが備え付けられ、頂上付近には展望台が設置される。今年中に完成の予定。
 信仰心を高めるとともに、この地域への観光を促進することを目的とした新しいキリスト像「擁護者キリスト」の発案者は、この3月に新型コロナウイルスに感染、合併症で死去したアドロアルド・コンザッティ同市長。
 「擁護者キリスト」像建設は、彫刻家のヘネシオとマルクス・モウラ親子が監修し、ボランティア団体「キリストの友協会」が200万レアル(約3800万円)の建設費を全額寄付でまかなう、という。募金は今も継続中。
 一方、リオデジャネイロの有名な「コルコバードのキリスト像」(救世主キリスト像)は、今年10月に建設90周年を迎える。これを記念して、現在、専門家による大規模な修復作業が行われている。
 全長38メートル、手と手の間が28メートル、重さ635トンのキリスト像は、1931年10月12日に建設された。
 修復は2020年10月に始まり、修復作業には建築家のクリスティーナ・ベントゥーラ氏をはじめ、エンジニアや地質学者など様々な分野の専門家が担当している。


◎カラバッジョの失われた傑作か、スペイン政府が競売を阻止
 【CJC】スペイン政府は4月8日、首都マドリードで競売に掛けられる予定だった絵画が、イタリアの巨匠カラバッジョによる所在不明の傑作である可能性があるとして、競売を阻止した。AFP通信が報じた。
 作品は17世紀の油絵で、十字架にかけられる直前のイエス・キリストが描かれている。
 ホセ・マヌエル・ロドリゲス・ウリベス文化相が競売の数時間前になって、この絵がカラバッジョ作品である可能性が示されたとツイッターで明らかにした。
 オークション・カタログには「(スペイン画家)ホセ・デ・リベラの弟子」の作品で、最低入札価格は1500ユーロ(約19万円)と記されていた。
 カラバッジョの絵画では、2014年にフランスの民家の屋根裏にあった古いマットレスの下から「ホロフェルネスの首を斬るユディト」という作品が見つかり、19年に競売に掛けられる2日前に外国人収集家に売却されるという出来事があった。同作には1億7000万ドル(約190億円)の価値があると推定されている。


《メディア展望》
 =カトリック新聞(4月11日)=https://www.cwjpn.com/cwjpn/
教皇復活祭メッセージ=苦しんでいる人に寄り添う=パンデミック 武力衝突と暴力 戦争や困窮からの避難
バチカン統計値=世界のカトリック信者数=増加続き13億4千万人に
ミャンマーの平和求め=国際協力NGOと宗教者ら外務省前で集会
司教協議会会長髙見三明大司教=談話とカテケジス発表=聖ヨセフに親しむために
いのちの光3・15フクシマ講演会開催=かつての循環型農業 困難=福島・飯舘村での実験から=伊藤延由さんに聞く

 
 =KiriShin(4月11日)=https://www.kirishin.com
東日本大震災特集「それぞれの10年」=与えられた「出会い」=これからも...=仙台・笹屋敷と「エマオ」の仲間たち=千葉正彦(日本基督教団東北教区被災者支援センター「エマオ」元スタッフ)
オンライン化への期待と危惧を議論=キリスト教主義の教授ら
「日本の原子力行政は破綻」=柏崎刈羽原発問題でNCCが声明
バチカンが第二次大戦中カトリック系新聞社の報道に圧力
米国で「教会に属する人」の割合、初めて50%を下回る

 
 =クリスチャン新聞(4月11日)=https://クリスチャン新聞.com
ミャンマー現地邦人からの報告=心からの祈り、そして、行動を
ミャンマーと共に祈る アジア福音同盟集会 政治、正義、教会のため
WEA総主事にシルマッハー氏就任=信教の自由、宗教間対話担当歴任
Tリーガー英田理志選手の父、恭司さん講演=「卓球は神様からの賜物、人生の一部」=第1回JiSP卓球ウェビナー
西日本豪雨災害支援施設「まびくら」閉所=これからも被災者に寄り添う

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