世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1626信(2022.03.21)

  • 教皇が来られることが、平和達成の「カギ」=キエフ市長が要請
  • 教皇フランシスコ、モスクワ総主教キリル1世とビデオ会談
  • ウクライナ大統領が米議会でオンライン演説、軍事支援や武器供給を要請
  • プーチン大統領、欧米志向のロシア人を「国の裏切り者」と非難
  • プーチン大統領の戦争、背後に「ロシア世界」思想=米メディア『ウォールストリート・ジャーナル』指摘
  • ボルソナロ大統領支持者多い町はコロナ死亡率高い=医学雑誌『ランセット』が指摘
  • 《メディア展望》

 

◎教皇が来られることが、平和達成の「カギ」=キエフ市長が要請

 【CJC】ウクライナの首都キエフのヴィタリー・クリチコ市長は、教皇フランシスコに、現在の状況下でも同市に足を運ぶよう促し、同市に来られることが人命救助と平和達成の「カギ」だと述べた。
 クリチコ市長は、訪問が不可能な場合、ヴォロディミル・ゼレンスキー大統領も交えたライブまたは録画のビデオ会議を提案している。
 バチカンのマッテオ・ブルーニ広報局長は、教皇が3月8日付の書簡を受け取ったことを確認した。教皇は、ウクライナの人々のために祈っていると述べたが、招待状や旅行については言及していない。


◎教皇フランシスコ、モスクワ総主教キリル1世とビデオ会談

 【CJC】教皇フランシスコは3月16日、モスクワ総主教キリル1世とビデオを通して会談した。バチカン・ニュースが報じた。
 バチカンのマッテオ・ブルーニ広報局長によれば、この会談には、教皇庁キリスト教一致推進評議会議長クルト・コッホ枢機卿と、モスクワ総主教庁渉外局長イラリオン府主教も同席した。
 会談では、ウクライナでの戦争と、平和を優先するためのあらゆる努力におけるキリスト教信者とその司牧者の役割が中心テーマとなった。
 教皇は、停戦のために、司牧者として平和の道を示し、平和の賜物を祈りたいとの思いによって実現したこの会談を、キリル総主教に感謝した。
 「教会は、政治的な言語を話さず、イエスの表現を用いる」、「われわれは、神、聖霊、神の母において同じ信仰を持つ聖なる民の司牧者である。それゆえに平和を推進し、苦しむ人を助け、平和の道を求め、戦争を止めるための努力において一致すべきである」ことに、教皇は総主教と同じ考えを示した。
 教皇と総主教は共に、現在進行中の和平プロセスの特別な重要さを強調。教皇は「なぜなら、戦争の犠牲を払うのは人々であり、ロシア兵であり、爆撃されて亡くなる市民である」と話した。
 さらに、教皇は「司牧者として、われわれには戦争に苦しむすべての人に寄り添い、助ける義務がある。われわれの教会にも、かつて聖なる戦争、正しき戦争などと語る時代があった。しかし、今は違う。平和の大切さをめぐるキリスト教的意識が広がった」と語った。
 「教会は平和と正義を強めることに貢献するよう召されている」ことに、教皇は総主教と意見を一つにした。
 教皇は最後に「戦争は常に正しくない。なぜなら犠牲者は神の民だからである。われわれの心は、子どもたちや、殺された女性たちや、すべての戦争の犠牲者を前に、涙を流さずにはいられない。戦争は決してとるべき道ではない。聖霊がわれわれを一致させ、司牧者として戦争に苦しむ人々を助けるようにと命じている」と話した。


◎ウクライナ大統領が米議会でオンライン演説、軍事支援や武器供給を要請

 【CJC】ワシントン発ロイター通信によると、ウクライナのゼレンスキー大統領は3月16日、米議会に対しオンライン演説し、死と破壊をもたらし避難民の流出につながっているロシアの侵攻と空爆に対抗するため、一段の軍事支援や武器供給を要請した。
 ゼレンスキー大統領は「人々を救うためにウクライナ上空に飛行禁止区域を作ること、これが果たして無理な要求だろうか?
やりすぎだろうか?」と問いただし、「私はあきらめてはいない」と強調した。
 北大西洋条約機構(NATO)と同様、バイデン氏や米議会の多くの議員らは、核武装したロシアとの紛争をエスカレートさせるという懸念から飛行禁止区域の設定に反対している。
 ゼレンスキー氏は、ウクライナが米国の圧倒的な支援と、バイデン氏の「個人的な関与、ウクライナと世界中の民主主義の防衛への誠実なコミットメント」に感謝しているとし、「我が国にとって、そして欧州全体にとって最も暗い時期であるからこそ、私はあなた方にもっと多くのことをしてほしいのだ」と訴えた。


◎プーチン大統領、欧米志向のロシア人を「国の裏切り者」と非難

 【CJC】ロシアのプーチン大統領は3月16日、テレビ演説で欧米志向のロシア人を「国の裏切り者」と呼んで痛烈に非難した。米メディア「CNN」が報じた。
 プーチン氏はこの中で「西側諸国はいわゆる『第5列』、国の裏切り者、ここで金を稼ぎながらあちらにいる者に頼ろうとするだろう」と発言。「私が言う『あちらにいる』とは、地理的な意味だけでなく、彼らの思考や隷属的な意識を踏まえた表現だ」とした。
 「第5列」は敵対勢力の同調者を指す表現で、スペイン内戦に端を発する。
 ロシアは現在、ウクライナでの軍事作戦が泥沼化し、欧米の制裁による経済危機に直面する。プーチン氏は国の苦境の原因は欧米の影響にあると主張することが多い。
 プーチン氏は、ロシアのLGBTQ(性的少数者)の権利を組織的に削減してきた。プーチン氏と共同歩調を取るロシア正教会トップのキリル総主教も、ウクライナ紛争について、「ゲイ・プライド」に代表される西側のリベラルな価値観とロシア圏の根本的な文化衝突の延長との見方を示していた。


◎プーチン大統領の戦争、背後に「ロシア世界」思想=米メディア『ウォールストリート・ジャーナル』指摘

 【CJC】ロシア正教の指導者モスクワ総主教キリル1世は最近、ウクライナで続く戦争について、正義と悪の黙示録的戦いに他ならないと語った。この戦争の結末は「神の加護を受けられるか否かという人類の行方」を決めることになる。米メディア『ウォールストリート・ジャーナル』(WSJ)3月18日の指摘を紹介する。
 プーチン大統領は、今回のウクライナ侵攻の目的が「一部のウクライナ人」の解放だとしており、キリル1世の説明によれば、その「一部のウクライナ人」は、世界の支配者と称する国々が提供する価値観的なものを拒否しているという。その価値観とは、同性愛者の権利を主張する「ゲイ・プライド」のパレードに代表されるものであり、「こうした諸国」に仲間入りする際の踏み絵の役割を果たしている。「こうした諸国」とは欧州連合(EU)と、さらに広く西側諸国を指している。
 ロシア正教は、プーチン氏の地政学的野望を支えるイデオロギーの形成に積極的役割を果たしてきた。その世界観は、現在のロシア政府をロシアのキリスト教文明の守護者と見なすものであり、それゆえロシア帝国と旧ソ連の版図にあった国々を支配する試みを正当化する。
 ウクライナ生まれの神学者で、キリル1世のアドバイザーを務めた経験を持つシリル・ホボラン神父によれば、こうした考え方は共産主義崩壊後のロシアがイデオロギーの空白を埋めようとする中で生まれたもので、長年迫害されてきたロシア正教が、新たに開けた公共の場で影響力を持つのと同時進行してきた。
 モスクワ総主教庁に務めた経験を持つセルゲイ・チャプニン氏によれば、これらが「ソ連崩壊後の市民宗教」、言い換えれば「ルスキー・ミール」(ロシア世界)という思想の原点になったという。ルスキー・ミールという言葉は11世紀に生まれたもので、現在のロシア・ベラルーシ・ウクライナの大半を含む東スラブ語圏のことを意味する。
 プーチン氏にとって「ルスキー・ミール」は、旧ソ連やそれ以前のロシア帝国の領土を含むロシアの正当な勢力圏を意味する言葉だ。プーチン氏は、ウクライナ侵攻の3日前の2月21日、「ウクライナはわれわれにとって単なる隣国ではない。ウクライナはわれわれの歴史・文化・精神世界と不可分の存在だ」と語っていた。ロシア正教はこの言葉を信奉し、そこに宗教的色彩を加えた。その宗教的意味合いの中では、ウクライナが特別な役割を担っている。
 しかし、ウクライナでは、ルスキー・ミールの宗教的概念は、政治的概念と同様の抵抗に直面した。ウクライナの正教会信者の多くはロシアが主導する正教会に属しているが、ウクライナにはかなりのカトリック信者のほか、モスクワからの独立を求めてきたウクライナ正教会の信者もいる。2019年、東方正教会の宗教指導者コンスタンチノープル総主教のバルトロメオ1世はその独立を認めた。
 この決定は東方正教会内に深刻な亀裂をもたらした。さまざまな国の教会が、モスクワ側についたり、コンスタンチノープル側についたりした。プーチン氏はバルトロメオ1世が米政府の命令に従っていると非難した。
 ロシア国内で、ルスキー・ミールは深く宗教的な響きを得ている。特に軍においては正教会の聖職者は軍の士気を高め、愛国心を促す。ロシアで核戦力を扱う陸海空の3軍には、いずれも守護聖人がいる。正教会はまた、シリア内戦におけるロシアの役割について、少数派のキリスト教徒を守るための「十字軍」だとして熱心に宣伝していたという。
 プーチン氏は昨秋の演説で、トランスジェンダリズムや「キャンセル・カルチャー(問題視される事柄に対するバッシング)」など、自らが西欧や米国に見受けられる文化的なトレンドと捉えているものを厳しく非難した。同氏は「われわれは異なる視点を持つ。われわれは独自の精神的価値観、歴史的伝統と多民族国家の文化に依拠しなければならない」と述べていた。
 しかしながら、ロシアによるウクライナ侵攻は、同教会が結束を求めてきた人々を分断し、侵攻の理由となったイデオロギー自体を損なう恐れがある。ロシアによるウクライナ侵攻以降、ウクライナの聖職者の一部はキリル総主教が戦争を支持していることに抗議するため、礼拝の際に同総主教への祈りを中止した。また、ロシア正教会への忠誠を撤回すると語る聖職者も出ている。


◎ボルソナロ大統領支持者多い町はコロナ死亡率高い=医学雑誌『ランセット』が指摘

 【CJC】有力医学雑誌『ランセット』が3月14日、18年大統領選でボルソナロ氏の得票率が高かった市は新型コロナ感染症による死亡率も高いという記事を載せた、とブラジル国内サイトが報じた。
 現地邦字メディア『ブラジル日報』によると、『ランセット』が掲載したのは「ブラジルにおける新型コロナ感染症の空間的かつ時間的ダイナミクスにおける政治的、社会経済的要因の関与」という論文で、オズワルド・クルス財団(Fiocruz)とブラジリア大学、リオ連邦大学(UFRJ)の研究者たちが5570市のデータから、18年選挙でのボルソナロ氏支持率と21年の新型コロナの死亡率に相関関係がある事を示している。
 大統領がマスク着用やワクチン接種の効果を否定し、薬効が証明されていない早期治療キットを推奨した事、デモやモトシアッタで人ごみを作らせていた事は周知の事実だ。
 医療レベルなどが似ている市の死亡率の比較では、18年選挙でのボルソナロ氏支持率が高かった南部や南東部の市の死亡率は、支持率が低かった北東部の市のそれを上回っている事などが明らかになった。
 一例は、セアラ州クラト市とリオ・グランデ・ド・スル州サピランガ市だ。どちらも大規模かつ人間開発指数(HDI)が中程度の市だが、人口10万人あたりの死者数(死亡率)は、前者が110人、後者は360人だった。
 中程度の規模でHDIが高い市同士での比較でも、ボルソナロ氏支持率が高いと死亡率が倍増という結果が出ている。
 研究では、連邦政府が全国規模の方針を立てなかったために市がコロナ禍に関する情報提供源となった事や、小中規模の市では政界や業界のリーダーの言葉の重みが増す事などが判明。小さな市では地元の政治家が情報伝達を独占し、企業家の言葉の影響力が増す上、科学的な裏づけが疎かになって虚報が流布し、科学的な論に疑問を持たせるようになるという。


《メディア展望》
 
 =カトリック新聞(3月20日)=https://www.cwjpn.com/cwjpn/
▼教皇=「血と涙の川」流れる=ウクライナへの支援誓う
▼独ケルンの枢機卿=教皇に辞任願いを提出=世虐待対応で批判受け
▼香港教区のチャウ司教=高齢者の感染対策求める=教会は全聖堂でミサ中止
▼授業で『ラウダート・シ』の精神学び四旬節エコカレンダー作成=静岡=不二聖心女子学院
▼灰の水曜日 広島、東京で平和願う祈り
 
 =KiriShin(3月11日)=https://www.kirishin.com
▼ウクライナ危機 揺らぐ世界=教会は祈りと支援へ
▼ロシアのウクライナ軍事侵攻に日本のキリスト教界からも抗議
▼"抵抗力と成長をもたらす十字架と復活"=東日本大震災国際神学シンポジウムでA・マクグラス氏
▼「朝鮮人矯正労働を否定するな」=佐渡金山の世界遺産推薦に抗議
▼中国が共産党大会前に宗教統制=ネット布教の制限強化
 
 =クリスチャン新聞(3月20日)=https://クリスチャン新聞.com
▼難民への緊急支援応援=ウクライナへ募金窓口も=ハンガーゼロ
▼国際飢餓対策機構=戦禍のキエフで緊急食料配布
▼戦火の中ウクライナのユダヤ人救出へ=ブリッジズ・フォー・ピース
▼派遣先含む周辺国に大量の難民流入=ウクライナ隣国派遣宣教師祈り要請
▼ウクライナはMBのルーツ=世界のメノ派が緊急支援

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