世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1656信(2022.10.17)

  • 第2バチカン公会議開始60周年=教皇による記念ミサ
  • 教皇、国連「世界食料デー」機会にメッセージ=「数字ではなく人間を軸に考える必要」
  • ロシアがウクライナの「プロテスタント教会閉鎖」
  • ウクライナ国境付近のロシアでタジク人兵士が銃乱射=上官の宗教侮辱に不満か
  • クリミア大橋爆破は、ウクライナ情報局が計画、主導した「テロ行為」とロシアが非難
  • ナチス時代のグルリット・コレクションがベルン美術館で展示
  • 《メディア展望》

 

◎第2バチカン公会議開始60周年=教皇による記念ミサ

 【CJC】教皇フランシスコは、第2バチカン公会議の開始から60年を記念するミサを10月11日行った。第2バチカン公会議(1962~1965)が開幕した日から60年目を記念したもの。
 バチカン・ニュースによると、教皇フランシスコは、11日夕方、バチカンの聖ペトロ(サン・ピエトロ)大聖堂で、聖ヨハネ23世(在位1958~1963)と同公会議の開始を記憶するミサを行った。
 同日夕方、ミサが行われた聖ペトロ大聖堂には、多くの枢機卿、司教をはじめ、聖職者、修道者・信者らが集まった。
 ミサに先立ち、聖ヨハネ23世による第2バチカン公会議開会の辞「ガウデット・マーテル・エクレジア」の一部と、同公会議の公文書の中でも最も重要とされる四つの憲章、『典礼憲章』『教会憲章』『神の啓示に関する教義憲章』『現代世界憲章』の数節が朗読され、参列者らは60年前、同じ場所で祝われた同公会議の幕開けを思い起こしていた。
 教皇フランシスコはミサの説教で、ヨハネ福音書21章、復活したイエスがティベリアス湖畔で再び弟子たちにご自身を現わされた時のペトロとの対話を取り上げた。
 このエピソードで、イエスはペトロに対し、「わたしを愛しているか」(ヨハネ21・15)と尋ね、「わたしの羊の世話をしなさい」(同21・17)と命じられた。
 主はその偉大な愛において人々に友として語りかけ、対話され(参照:神の啓示に関する教義憲章)、今も、常に、その花嫁である教会に「わたしを愛しているか」と尋ねている、と教皇は述べ、第2バチカン公会議はこの問いに対する一つの大きな答えであった、と話した。
 教皇は、神にその優位を再び返すために、またイエスとイエスが愛した人々を深く愛し、イエスに満ち溢れると共に清貧で、自由でいて人を自由にする教会を取り戻すために、同公会議を再発見するよう招いた。
 そして、同公会議は福音書におけるペトロのように、最初の愛の源泉であるガリラヤへ戻り、その貧しさの中に神の聖性を再び見出すように導いている、と話した。
 また、イエスはペトロに「わたしの羊の世話をしなさい」と命じられたが。イエスはこの「世話をする」という言葉に、ご自身がペトロに望む愛の形を示された、と教皇は述べた。
 教皇はさらに、イエスがペトロに世話を託した羊たちを、「わたしの羊(たち)」と呼んでいることに注目。イエスが「わたしの」と愛情を込めて呼ばれる羊たちすべてを一致させて導く牧者の使命を強調した。
 主は、ご自身の羊、ご自身の群れであるわたしたちの一致を望まれる、と述べた教皇は、分極化を超え、一致を保ち、「すべての人を一つにしてください」(参照:ヨハネ17・21)という主の願いをより実現できるようにと祈った。
 ミサの終わりに、教皇が手にするろうそくから、代表の信者のろうそくに火が灯され、そのともし火は他の参加者たちのろうそくへと伝えられていった。


◎教皇、国連「世界食料デー」機会にメッセージ=「数字ではなく人間を軸に考える必要」

 【CJC】教皇フランシスコは10月14日、国連の「世界食料デー」を機会に国連食糧農業機関(FAO)の屈冬玉(チュー・ドンユィ)事務局長に宛メッセージを送った。
 「世界食料デー」は世界の食糧問題を考えるために国連によって10月16日に定められた。
 メッセージで教皇は、1945年のFAO設立から今年で77年を迎えることに触れつつ、同機関の誕生は、第二次世界大戦の影響によって困窮と飢えに圧迫された多くの人々の必要に応えるためであったことを回想。
 「残念ながら、今日も、わたしたちは『第三次世界大戦』ともいえる戦争を背景に生きている。世界は戦争の中にあるということを、わたしたちは深く考える必要がある」と指摘した。
 2022年度の「世界食料デー」のテーマ、「誰一人取り残さない。より良い生産、より良い栄養、より良い環境、より良い生活」に言及された教皇は、人類を襲う数多くの危機に立ち向かうには、誰一人取り残すことなく、皆で働き、共に歩むことが必要であり、そのためには第一に他者を自分たちの兄弟姉妹、人類家族の同じ一員としてとらえることが大切である、と述べている。
 同時に教皇は、あらゆる計画を、数字や統計ではなく、具体的なストーリーや顔を持ち、一定の場所に居住する人間を軸にして考えることの重要性を強調した。


◎ロシアがウクライナの「プロテスタント教会閉鎖」

 【CJC】米専門メディア「クリスチャニティ・トゥデイ」が伝えるところでは、英国国教会の週刊紙「チャーチ・タイムズ」が10月7日、親ロシア派勢力が、ウクライナの占領地域にあるプロテスタント教会を閉鎖している、と報じた。
 キリスト教迫害に反対するキャンペーン「リリース・インターナショナル」が、同国南東部サポリージャ州メリトポリの福音派プロテスタント3教会と、マリウポリのバプテスト教会が、この1カ月間に閉鎖されたと報告している。
 目撃者の報告によると、夜の礼拝中にバプテスト教会に入り、閉鎖を命じたロシア兵が「我々の信仰はただ一つ。正教だ」言ったという。
 ロシアによるウクライナの住宅地での砲撃で、多くの建物が暖房のない状態になっている。救援団体「デポール・ウクライナ」の理事長ヴィタリー・ノヴァク神父は「ここでは誰もが冬のことを心配している」としながらも、懸念は天候だけでなく、ウクライナがロシアのエネルギーに依存し続けることにもあると述べた。「ロシアがいつ電力供給に打撃を与えるかわからない。ガスや石油をロシアに依存したままなので、ロシアからどれだけのエネルギーが供給されるのか誰も信用していない」という。
 国際救援団体「デポール・インターナショナル」の責任者マシュー・カーターは「私たちがウクライナで見ているものは、完全に衝撃的なもの。今後、ウクライナ全土でホームレスが広がり、高齢者や障害者などの特に弱い立場の人々が最も大きな打撃を受けることになろう」と述べている。


◎ウクライナ国境付近のロシアでタジク人兵士が銃乱射=上官の宗教侮辱に不満か

 【CJC】ロシアのウクライナ国境に近いベルゴロド州の軍演習場で起きた乱射で、独立系メディアは10月16日、事件で負傷した兵士の証言を伝えた。時事通信のまとめによると、国防省が「旧ソ連構成国出身の2人」と発表した容疑者は、中央アジアのタジキスタン人3人で、信仰をめぐる上官とのトラブルが原因と見られている。
 国防省は発生当日の15日、「テロ」と断定し、射撃訓練中の志願兵ら11人が死亡したと明らかにした。
 独立系メディアによると、現場には志願兵も予備役もいた。カフカス地方出身のイスラム教徒の兵士らがウクライナ侵攻を「自分たちの戦争ではない」と批判すると、上官は「聖戦だ」と主張。これを聞いたタジク人らは「イスラム教徒が異教徒と戦うのが聖戦だ」と反論した。上官は「それならアラー(神)は弱虫だ」と侮辱し、演習場は騒然となった。
 直後の射撃訓練時、志願兵のタジク人3人は自動小銃を準備し、まず上官を射殺。「イスラム教徒は離れるように」と告げてから、兵士らに向けて発砲した。容疑者3人のうち2人はその場で射殺され、1人は逃走した。
 容疑者のタジク人らは信仰心があつく、必要な時間に礼拝を認められずに不満を募らせていたという。


◎クリミア大橋爆破は、ウクライナ情報局が計画、主導した「テロ行為」とロシアが非難

 【CJC】ケルチ海峡にかかるクリミアとロシアをつなぐクリミア大橋で10月8日、劇的な爆発があった。その原因について、これまでのところ推理や諸説が飛び交っているが、信ぴょう性に乏しいものも散見される。
 ロシアはすぐさま、爆発物を積んだトラックが現場で爆発したのだとしながら、主謀者は特定しなかった。ウラジーミル・プーチン大統領は、橋への爆発攻撃は「テロ行為」だと非難した。
 ロシア連邦保安庁(FSB)は「ウクライナ情報局が計画、主導したテロ攻撃」と断定、プーチン大統領はそれを口実にウクライナの民間施設に報復攻撃を加えた。
 橋が爆破された当日10月8日の米紙「ニューヨーク・タイムズ」(電子版)に掲載されたキーウ駐在のマイケル・シュビルツ、アンドリュー・E・クレイマー両特派員発の記事にこういう記述があった。
 「ウクライナの高官の1人は、攻撃の背後にウクライナの存在があるというロシア側の報道を裏付けた。この高官は、政府が爆発について話すことを禁止しているため匿名を条件に、ウクライナの情報機関が橋を渡るトラックに積み込まれた爆弾が爆発するように画策したと付け加えた」。
 トラックは橋を走行中に大爆発を起こし「自爆攻撃」いう見方が有力だったが、ウクライナ人の宗教は、ロシア正教を中心にキリスト教徒が90%強を占めている。軍事作戦とはいえキリスト教が禁止している「自殺行為」を許容するとは思えない。
 その疑問は12日のFSBの発表で半ば解けたようだ。
 発表では、爆発したトラックを運転したのはロシア市民で1971年生まれのマヒール・ユスボフという人物だったとされた。ユスボフとは「元ソ連のチェチェン、タタールとウズベクに多い苗字」という解説もあった。
 チェチェンではソ連時代にイスラム教徒を中心とする住民が独立を宣言して二度の内戦となり、10万人以上の市民が殺害されて今でもロシアに対する遺恨が残っているとされる。


◎ナチス時代のグルリット・コレクションがベルン美術館で展示

 【CJC】スイス公共放送協会(SBC)の国際部で、スイスに関する報道を独立した立場で行っているメディア「SWI」によると、ナチス略奪品が含まれているとされ、物議を醸したコーネリウス・グルリット・コレクションの展示が、スイスのベルン美術館で9月16日から2023年1月15日まで開かれている。同美術館が、グルリット・コレクションの作品展を開くのは3度目。今回は作品そのものよりも、作品の出所に重点を置いた。
 ドイツ当局が2012年、グルリット・コレクションの存在を偶然突き止めたのをきっかけに、ナチス略奪美術品の扱いを巡って大きな議論が起こった。
 コーネリウス・グルリットは2014年、ナチス時代の美術商、父ヒルデブランド・グルリットが主に収集したコレクション約1600点をベルン美術館に遺贈した。しかしすでに略奪品と判定され正当な所有者に返却した作品や、出所確認のためドイツに戻った作品が、数十点ある。
 ベルン美術館は、グルリットの遺産について、透明性のあるアプローチに取り組んできた。2017年には、スイスで初めて出所調査部門を設立。このアプローチは、トラフィックライトシステムと呼ばれる手法を使った。出所に問題がない作品は緑色。ナチスの略奪品は赤色。そして大半は、出所情報が不完全であることを意味する黄/緑色か、ごく一部は、出所情報が不完全で略奪品の証拠はないが、それを指し示すものがある黄・赤色に分類された。後者の場合は返還が検討されている。


《メディア展望》
 
 =カトリック新聞(10月16日)=https://www.cwjpn.com/cwjpn/
▼教皇、ロシア大統領に=「死の連鎖」の停止求める
▼教皇の一般謁見講話=イエスは「最高の忠実な友」
▼教皇、11月に訪問=中東のバーレーン
▼ニカラグアの大統領=教会を「殺人者集団」と攻撃
▼フランス司教団が反対=安楽死法制化は「不道徳」
 
 =KiriShin(10月11日)=https://www.kirishin.com
▼検証=〝協会〟の実相と教会の課題=拒絶ではなく救いと慰めを=日本基督教団カルト問題連絡会世話人・豊田通信さん
▼日基教団総会=対面は4年ぶり=12年ぶりの新議長に雲然俊美氏
▼日本伝道会議1年後に控え=プレ東海フェス「宣教協力」に期待
▼葬儀社「ライフワークス」が社名変更=「キリスト教葬儀の学校」も開講
▼台湾の蔡英文総統=ドイツ超党派議員団と会談
 
 =クリスチャン新聞(10月16日)=https://クリスチャン新聞.com
▼ウクライナ4州「併合」の衝撃=主の介入を祈って
▼〝神の密輸商人〟ブラザー・アンドリュー死去=オープン・ドアーズ創設=共産・イスラム圏に扉
▼40代以下「IG:NIGHT」開催=同じ目線で賛美・奉仕学ぶ
▼FEBC70周年=記念番組を放送=「ひとりと出会う」姿勢で
▼奈良県福音宣教協力会講演会で岸本大樹氏=コロナ禍における教会を語る=問われる信仰の主体性と一致

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