世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1676信(2023.03.06)

◎中国が全人代開幕、23年成長率目標「5%前後」
◎教皇、今年4月にハンガリー司牧訪問
◎ウクライナにおける戦争から1年、教皇の祈りとアピール
◎ブラジル貧民街の個人宅、「今年の家」に 建築専門サイトが選出
◎クフ王のピラミッドで未知の空間発見、構造解明に期待


 

◎中国が全人代開幕、23年成長率目標「5%前後」

 【CJC】中国の第14期全国人民代表大会(全人代)が3月5日、北京の人民大会堂で開幕した。ロイター通信(日本語)によって伝える。
 李克強首相は政府活動報告で、2023年の経済成長率の目標を5%前後とし、昨年の目標(5.5%前後)より低く設定した。
 23年の財政赤字目標は対国内総生産(GDP)比で3.0%とした。昨年の目標は2.8%前後。
 消費者物価指数(CPI)上昇率の目標は3%前後に設定、22年の目標と同水準とした。CPIは昨年は2.0%上昇した。
 李首相は政府活動報告で、経済の安定と消費拡大の必要性を強調。都市部では今年、約1200万人の雇用を創出するとし、昨年の目標である少なくとも1100万人を上回る目標を掲げた。不動産部門にリスクが残っているとも警告した。
 複数の関係筋は全人代に先立ちロイター通信に、今年の成長率目標は5~5.5%になるとしており、一部は最大6%の可能性もあると述べていた。実際の目標は予想レンジの下限となった。
 2023年予算案を公表した中国政府は、国防費として前年比7.2%増となる1兆5500億元(約2240億ドル)を計上した。昨年の増加率を若干上回った。
 国防費増加率は8年連続で1桁台となった。例年通り内訳は明らかにせず、全体の金額と増加率のみ公表した。
 李首相は政府活動報告で、台湾との関係の平和的な発展を促進し、中国の「平和的統一」のプロセスを進めるべきとする一方、台湾独立の動きに対しては断固とした措置を取って反対していく姿勢を改めて示した。
 中国はここ3年ほどの間に台湾周辺で軍事活動を活発化させており、昨年8月にはペロシ米下院議長(当時)の訪台に反発し軍事演習を実施している。
 中国は他にも、対米関係の冷え込みや人口動態の悪化など、多くの課題に直面している。出生率が急落し、昨年は1961年の飢饉の年以来、初の人口減に見舞われた。


◎教皇、今年4月にハンガリー司牧訪問

 【CJC】バチカン・ニュース(日本語)によると、教皇フランシスコが、今年4月下旬、ハンガリーを司牧訪問することが明らかになった。
 バチカンのマッテオ・ブルーニ広報局長の声明によれば、教皇はハンガリーの政府、カトリック教会の招待に答え、4月28日から30日まで、司牧訪問する。
 教皇のハンガリー司牧訪問の告知と共に、詳細な日程が発表された。
 4月28日(金)午前、教皇はローマからブダペストに到着。現地の国際空港での出迎えを受けた後、大統領官邸で歓迎式に臨み、大統領への表敬を行う。続いて、首相と会談。旧カルメル会修道院において各界代表、駐在外交団との会見。午後、聖ステファノ教会で、司教、司祭、修道者など、ハンガリーの教会関係者との出会いを持つ。
 4月29日(土)午前、教皇は、福者ラースロー・バッチャーニ・ストラットマン学園の子どもたちを私的に訪問。ハンガリーの聖エリザベト教会で貧しい人や難民と出会う。午後、ブダペスト・スポーツアリーナで若者たちとの集い。続いて、バチカン大使館でイエズス会会員らと会見する。
 4月30日(日)午前、教皇はブダペスト市内コシュート・ラヨシュ広場でミサを行う。午後、パズマニ・ペーター・カトリック大学で、大学・文化関係者との出会い。ブダペスト国際空港での送別式を経て、ローマへ戻る。


◎ウクライナにおける戦争から1年、教皇の祈りとアピール

 【CJC】バチカン・ニュースがまとめた「回顧録」を紹介する。
 
 2022年2月24日のウクライナへのロシアによる軍事侵攻開始から、1年が経過した。
 侵攻開始の前日、2月23日、教皇は一般謁見の席で、ウクライナ情勢の緊迫に深い悲しみと、苦悩、不安を表明。「神は平和の神、戦争の神ではありません。神は皆の父であり、誰かのものではありません。わたしたちが必要とするのは兄弟であり、敵ではありません。国家間の共存を破壊し、国際法を軽んじながら、人々の苦しみを増すようなあらゆる行動を控えるよう、関係するすべて当事者たちにお願いします」と呼びかけた。
 しかし、その翌日24日朝、ロシア軍はウクライナの北部、東部、南部に侵入し攻撃を開始。バチカン国務長官ピエトロ・パロリン枢機卿は、「皆が憂慮していた悲劇的な展開が、残念ながら現実になろうとしている。しかし、まだ努力の時間はあり、協議の余地はある。まだ、知恵を用いて一部の利害を優先させることを防ぎ、皆の正当な願いを守り、世界を戦争の狂気と恐怖から免れさせることはできる」と声明した。
 戦争勃発直後から、教皇のアピールは頻度を増していった。27日のお告げの祈りで、教皇は「戦争をする者は、人間性を忘れます」、「あらゆる紛争において、戦争の狂気の代償を身をもって払う真の犠牲者は普通の市民たちです」と述べ、避難者のための人道回廊を開くよう訴えた。
 2022年の「灰の水曜日」、3月2日、教皇の呼びかけで「平和のための断食の日」が行われた。同日の一般謁見で、教皇はお年寄りたちをはじめ、ウクライナの人々に連帯を示すと同時に、避難民のために「国境と心と家の扉」を開いたポーランドの人々に感謝を述べた。
 3月6日、教皇はお告げの祈りで、「ウクライナでは血と涙が流されています」、「これは単なる軍事作戦ではありません。死と破壊と悲惨をもたらすだけの戦争です」と強調。母と子たちをはじめとする避難民に思いを寄せ、人道的支援を願った。また、教皇は、教皇慈善活動室のコンラート・クライェフスキ枢機卿と、人間開発省のマイケル・チェルニー枢機卿をウクライナの人々の支援のために現地へ派遣したことを明らかにした。
 3月13日のお告げの祈りで、教皇は「おとめマリアの名を冠した都市マリウポリは、ウクライナを破壊しつつある耐えがたい戦争によって、今や殉教の町となりました」と悲しみを表し、「神の名において願います。この殺戮を止めてください」と嘆願。
 教皇のウクライナ情勢に対する言及、アピール、祈りは、毎週の一般謁見やお告げの祈りにおいてだけでなく、様々な機会を通し行われた。
 教皇は、3月25日、バチカンでとり行われた共同回心式の中で、全人類、特にロシアとウクライナをマリアの汚れなき御心に奉献。「戦争の嵐の中でわたしたちを遭難させないでください」、「憎しみを消し、復讐をなだめ、赦しを教えてください」、「戦争からわたしたちを解放し、核兵器の脅威から世界を守ってください」「戦争を止め、世界に平和をととのえてください」と聖母に祈りを捧げた。
 4月6日の一般謁見で、教皇はウクライナ・キーウ近郊ブチャでの市民に対する殺戮を非難した。
 「『戦争を止め、武器を置き、死と破壊の種をまくのをやめよ』という、犠牲者たちの無実の血が上げる叫びは、天にまで届いています」と述べた。「この国旗は戦場から、苦しみに痛めつけられた町、ブチャから来たものです」と教皇はブチャから届けられたウクライナ国旗を広げられた。
 5月1日のレジーナ・チェリの祈りで、教皇はカトリック教会の伝統で聖母に捧げられた5月、毎日のロザリオの祈りを平和のために捧げるようすべての信者たちに願った。
 5月8日「ポンペイの聖母」の記念日、教皇は正午の祈りで、イタリア南部ポンペイの聖母巡礼聖堂に集った信者たちと心を合わせ、ウクライナの人々の苦しみと涙を聖母に示し、平和を祈願された。
 「聖母月」最終日、5月31日、教皇はローマの聖マリア大聖堂の「平和の元后マリア」像前で、世界の聖母巡礼聖と中継で結ばれた、ロザリオの祈りの集いを持った。教皇はこの中で「平和の大きな恵み」を求め、人々の回心、暴力や復讐心に満ちた心の変容を祈った。
 教皇は、6月1日の一般謁見で、ウクライナの小麦の輸出停滞に懸念を表明。この問題を解決し、普遍的な人権である「食料への権利」を保証するためにあらゆる努力を惜しまぬよう、また小麦という基本的な食料を戦争の武器として用いることがないよう、アピール。
 9月中旬に行われたカザフスタン訪問からの帰国途中、教皇は記者会見で、「すべての人に対話の可能性は与えなくてはならない。対話によって何かが変わる、他の見方や考え方を与える、という可能性は常にある」と常に対話に開かれた姿勢を強調、「さもなくば、平和への唯一の理性的な扉を閉ざしてしまうことになる」と語った。
 教皇は、10月2日正午の祈りで、「ウクライナにおける戦争の状況は深刻かつ破壊的、懸念すべきものになっている」、「この恐ろしい理解不能な戦争は収まるどころか、流血の事態を増大させながら、さらに広がろうとしている」と深い憂慮を表明。「人類が再び核の脅威に直面していることはもってのほかである」と述べた。教皇はロシア連邦大統領に対し、この暴力と死の連鎖を自国民への愛のためにも止めるようにと訴え、同時に、ウクライナ大統領に対し、平和のための真剣な提案に心を開くよう信頼をもって呼びかけた。
 12月8日、「無原罪の聖マリア」の祭日、教皇はローマ市内スペイン広場の聖母のモニュメントの前で祈りを捧げた。「無原罪のおとめよ、長い間平和を主に祈ってきたウクライナの人々の感謝を、今日ここでお伝えするはずでした」と教皇は言葉を詰まらせながら聖母に語りかけ、「あなたが十字架の下で御子のそばに留まられたように、あなたが彼らと、苦しむすべての人々と、共におられることを知っています」、「愛が憎しみを超え、真理が欺瞞に勝利し、赦しが侮辱にまさり、平和が戦争に打ち勝つと、信じ、希望し続けることができますように」と祈願した。
 12月25日、2022年度降誕祭の「ウルビ・エト・オルビ」で、教皇はウクライナに思いを向け、「ウクライナの人々は、10ヵ月にわたる戦争による破壊のために、この降誕祭を暗さと寒さの中で、あるいは自分の家から遠く離れた場所で過ごしています。苦しむすべての人々を助けるために、わたしたちがすばやく具体的な行動を取ることができるよう、また武力を鎮める力を持った人の精神を照らし、この言語道断の戦争を直ちに終わらせることができるよう、主が助けて下さいますように」と祈った。
 教皇は、2023年1月1日のカトリック教会の「世界平和の日」のメッセージの中で、「新型コロナウイルスによるパンデミックが最悪の状態を脱したかと思われた時、もう一つの恐ろしい災難が人類を襲った」とウクライナにおける戦争に言及。この戦争が無実の人たちの命を奪い、人々を不安に陥れているだけでなく、小麦や燃料問題に代表されるように、遠く離れている人々にまで苦しみを与えている状況を示した。
 教皇は「この戦争は他の地域で起きているすべての戦争と同様、全人類の敗北を表すもの」と強調。適切な解決がまだ模索されるこの戦争に対し、わたしたちはどうすべきなのかと問いながら、まず心を改め、自分や自国のことだけに関心を向けずに、普遍的な兄弟愛の精神のもと、共通善の光に照らし考えることから始めなくてはならない、と招いている。
 さらに、1月9日、駐バチカン外交団への年頭の言葉で、教皇は、「今日いまだに核の脅威は回避されず、世界を恐怖と不安に陥れている」と述べ、「核兵器の所有は倫理に反する」、「核兵器による脅しの下では、いつもわれわれ全員が敗者である」と明言。ウクライナにおける戦争の死と破壊、周辺地域のみならず世界全域に与えている影響を見つめつつ、この意味のない戦争を直ちに止めるようアピールを新たにした。


◎ブラジル貧民街の個人宅、「今年の家」に 建築専門サイトが選出

 【CJC】AFP=時事通信によると、ブラジル南東部ミナスジェライス州ベロオリゾンテ郊外のファベーラ(スラム街)にある一見質素な家が、世界的建築専門サイトで「今年の家」に選ばれた。
 建築関連ニュースサイト「アーキデーリー」主催の「ビルディング・オブ・ザ・イヤー2023」の住宅部門でトップに選ばれたのは、アーティストのカドゥ・ドスアンジョスさん(32)の自宅。2階建てで床面積は66平方メートル。デザインを手掛けたのは、ファベーラで無償もしくは低価格でサービスを提供する「LAC」だ。
 インドやメキシコ、ドイツ、ベトナムなどからエントリーのあった競合を押しのけての選出となった。
 「アーキデーリー」は「ドスアンジョス邸」について、地域にある一般的な材料を用いつつ、採光や風通しにも配慮し、良好な居住環境を創出したモデルケースと評価している。
 ドスアンジョスさんは、「受賞を大変誇りに思う。ファベーラといえば暴力や土砂崩れ被害についての報道ばかりだから」と語った。「きょう、この家は世界一の高みにある」


◎クフ王のピラミッドで未知の空間発見、構造解明に期待

 【CJC】カイロ2日発ロイター通信(日本語)によると、エジプト観光・考古省は3月2日、首都カイロ近郊のギザにあるクフ王のピラミッド内部に通路のような空間が見つかったと発表した。4500年の歴史を持つ大ピラミッドにおける新発見につながる可能性もある。
 見つかった空間は長さが約9メートル。2015年に始まった「スキャンピラミッド」プロジェクトによる成果で、3Dシミュレーションや宇宙線を利用した新技術を駆使してピラミッド内部構造の調査が行われた。
 学術誌「ネイチャー」に掲載された論文によると、今回の発見はピラミッドの構造解明につながる可能性があるほか、切妻型になっている新たな空間の目的についても調査が行われる。
 エジプト考古最高評議会のモスタファ・ワジリ議長は、今後もスキャンによる調査を続けるとし「通路の奥に何が見つかるかを把握したい」と述べた。
 宇宙線が大気に衝突して生じる「ミュー粒子」を利用した調査には、名古屋大学の技術が用いられた。


≪メディア展望≫
 
 =カトリック新聞(2月26日)=https://www.cwjpn.com/cwjpn/
▼教皇=トルコとシリアの大地震で国際社会の連携呼びかける
▼教皇=アフリカ訪問後に、武器取引が「最大の災い」
▼教皇、青年に呼びかけ=人身取引や搾取との闘いで「人間の尊厳の宣教者」に
▼カリタスジャパン=トルコ南東部地震=救援募金を開始
▼ニカラグア独裁政権=司教に禁錮26年実刑判決
 
 =KiriShin(3月1日)=https://www.kirishin.com
▼シリーズ「2世」の呻き=宗教界こそ目を向けるべき
▼日本オリベットアッセンブリー教団=本部を天城山荘に移転
▼日本基督教団=網中彰子氏が女性初の総幹事に
▼日本キリスト教婦人矯風会が声明=平和外交求め、原発回帰に反対
▼キリスト教専門古書店、友愛書房が2月で閉店
 
 =クリスチャン新聞(2月19日)=https://クリスチャン新聞.com
▼ヘイトクライム闘いの地で「第37回外キ協全国協議会」開催=「差別許さない」で一つに
▼トルコ南東部で地震=各キリスト教支援団体=緊急支援開始
▼JCE7宣言文第二次案公開
▼「善き隣人バンク」クラウドファンディング開始=孤独抱える人々の命つなぐ"お話し相手"

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