講義概要・シラバス

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宗教学5「日本文化の中の宗教──古代からグローバル時代に至る宗教のポリティクス」

<概 要>
 この授業では,日本宗教の成り立ちやその基本的な思想・世界観を学びます。その際,古代世界からグローバル世界までを時代背景として,日本宗教が文化や政治とどのような相互関係にあったのかを考えていきます。
 みなさんは日本の宗教について,どの程度知っているでしょうか。たとえば,客人のために京都・奈良観光をすることになったと考えてみてください。八坂神社,北野天満宮,東大寺などに客人を連れて行くことはできるでしょう。しかし,そこでそれぞれの観光地(宗教施設)を眺める以外に,みなさんはどのような歴史的・宗教的知識を語ることができるでしょうか。神社仏閣は,それが根ざしている宗教的伝統をシンボライズしたものです。日本宗教についての基礎知識を身につけることによって,みなさんは,身の回りにある歴史的建造物や芸術について,より深く理解し,また語ることができるようになるはずです。
 この授業では伝統的な日本宗教として,神道,仏教,儒教,道教,民俗宗教を取り上げます。仏教,儒教,道教は中国・朝鮮半島経由で日本に入ってきた外来宗教ですが,それ以前にあった日本の土着の伝統と相互に影響を及ぼし合いながら,日本宗教の多様性と一体性を形成してきました。また,古代世界の頃から,宗教は共同体や社会と深い関係を持っています。仏教が国教的役割を果たした時代もありました。宗教の教えの側面だけでなく,宗教のポリティクスについても,この授業では重点的に扱っていきます。
 明治期以降,日本社会は欧米の視線を強く意識することになり,それは日本宗教にも大きな影響をもたらしました。キリシタン弾圧以降,キリスト教との再度の接触も,この時期に本格的に始まります。この授業では,日本宗教を一国史の中で自閉的に語るのではなく,世界史的な比較の視点を導入していきます。
 キリスト教をはじめとする一神教の伝統は,日本宗教とはかなり異なる性格を持っています。しかし,そうした一神教の歴史観や自然観をも視野に入れることによって,日本文化に根ざした歴史観や自然観を,より客観的に見ることができるようになります。この授業では,そうした比較宗教学視点を通じて,そもそも「宗教」とは何なのか,ということについても理解を深め,グローバル社会における日本宗教の語り方を考えていきます。
 現代の日本社会は,あまり宗教的ではないと言われます。しかし,その一方で,霊魂やあの世(来世)の存在は当たり前のように受けとめられています。たとえば,日本の漫画やアニメには,しばしば日本の伝統的宗教観が反映されています。授業では漫画やアニメなども素材として利用していく予定です。

<到達目標>
 学生が日本宗教の成り立ちやその基本的な思想・世界観を理解し,また,日本宗教が文化や政治とどのような相互関係にあったかについて理解を深めていくことを目標としています。

<授業計画>
 1(10/01) 導入 religion01.pdf
     【日本宗教の形成と展開】
 2(10/08) (通史)宗教の風景 religion02.pdf
 3(10/15) (古代)神々の世界 religion03.pdf
 4(10/22) (古代)仏教以前、仏教伝来 religion04.pdf
 5(10/29) (中世)平安時代の宗教 religion05.pdf
 6(11/05) (中世)鎌倉仏教 religion06.pdf
 7(11/12) (中世)禅とその文化 religion07.pdf
 8(11/19) (近世)近世の宗教 religion08.pdf [講演案内]lecture.pdf
     【近現代における日本宗教】
 9(12/03) 宗教を規定する政治力学 religion09.pdf [テキスト 序論・第一章を読む]
10(12/10) (休 講)海外出張(トルコ)のため。※テキストを読み進めて下さい。
11(12/17) 近代日本における政教分離の形成と構造 [第二・三章] religion10.pdf
12(12/24) 一神教と多神教をめぐるディスコースとリアルポリティーク [第四章]
       religion11.pdf
13(01/07) 宗教の多元化と多元主義 [第五章] religion12.pdf
14(01/14) 信仰の土着化とナショナリズムの相関関係 [第六章] religion13.pdf
15(01/21) まとめ [結論] religion14.pdf

<成績評価基準>
平常点(出席,クラス参加等)  30%
期末レポート  70%

1.講義前半で扱った日本宗教の中から、関心のあるものを一つ取り上げ、タイトルをつけ、その「おもしろさ」を論じてください。(600字、配点20点)
2.講義後半で扱ったテーマの中から関心あるものを選び、タイトルをつけ、あなた自身の考えを展開してください(テキストを適宜参照すること)。(1400字、配点50点)

(例)
1.神仏習合について
本文(600字)
2.科学と宗教の近代的葛藤
本文(1400字)


<テキスト>

<参考文献>
末木文美士  『日本宗教史』 岩波書店、2006年 (岩波新書1003)  
阿満利麿  『宗教は国家を超えられるか-近代日本の検証-』 筑摩書房、2005年(ちくま学芸文庫)   
※参考文献は,クラスの中で随時指示します。

<参照URL>
小原克博 On-Line  https://www.kohara.ac/