KOHARA BLOG

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多神教を歩こう?

 Yokoさんのコメントでも紹介されていましたが、朝日新聞7月3日の社説「紀伊山地――多神教を歩こう」に目がとまりました。一神教学際研究センター主催の講演会の広告と奇しくも同じ新聞に掲載されていたので、これは、わざとか?!と思うほどでした(もちろん、偶然の一致です)。
 この社説の内容は、紀伊山地が世界遺産に登録されたことを解説したものですが、そこには次のような一節があります。

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 日本固有の信仰である神道と大陸伝来の仏教、それらが融合した神仏習合、さらに外来の道教をとりいれた修験道が共存するという多神教の世界である。
 世界を見渡せば、イスラム教とキリスト教の対立など、一神教同士のいがみあいが絶えない。
 異なる宗教や価値が平和に共存するにはどうしたらいいか。紀伊山地の紹介は、21世紀の世界に日本から発信する貴重なメッセージでもある。
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 紀伊山地の宗教的特徴や多神教を紹介するのは結構なことですが、なぜ、こういつも、一神教の酷評と抱き合わせでなければ説明できないのでしょうか。
 世界に発信するような貴重なメッセージであれば、もっと自立的な多神教の自己紹介をしてもらいたいものです。そうでなければ、その概念のあいまいさゆえに、たとえば、戦時中の日本の知識人が好んで用いた「アジア主義」といった考え方と、どう構造的に違うのか、という問いに答えることはできないでしょう。
 また、「イスラム教とキリスト教の対立」「一神教同士のいがみあい」は、今日の世界の現実を描写するには、あまりにも事柄を単純化しすぎてはいないでしょうか。本来複合的であるはずの問題を、腑に落ちやすい単純な問題設定へとすり替えてしまうのは、大いに問題です。
 一神教的な世界理解に対し、多神教的な世界理解を発信すれば、争いが解決する、というのなら、ぜひがんばってやってもらいたいと思います。一神教世界の人たちが耳を傾けるようなメッセージを構築する基礎的な作業すら、残念ながら、まだ目にしたことはありません。
 このあたりのことは、また別の機会にきちんとまとめたいと思います。

■朝日新聞7月3日社説「紀伊山地――多神教を歩こう」
https://www.asahi.com/paper/editorial20040703.html

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