KOHARA BLOG

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フロリダからのPodcast授業への感想

 すでにいくつかコメント(8月10日記事へのコメント8月7日記事へのコメント)をいただいている boxerconan さんから、Podcast配信された宗教学6の非常に丁寧な感想を寄せていただきました。アメリカでの経験を織り込んだ鋭い観察眼が見受けられ、私一人で独占するのはもったいないので、ご本人の許可を得て、紹介させていただきます。
 中には、有益な情報へのリンク情報もあり、楽しめます。

 boxerconanさんはフロリダ在住の方で、アメリカに20年滞在されています。そして、Macユーザー。boxerconan のブログ「Green AAPL & Country Life (グリーン・アップルと田舎暮らし)」はかなりおもしろいです。特に、Appleユーザーには、たまらない情報源です。
 このブログで知ったのですが、大統領候補者のオバマもマケインもMacユーザー、そして、ダライ・ラマもMacユーザーであることを知りました。
 また、ごく最近の記事では中国から iTunes Storeへのアクセスがブロックされたということを知りました。
 以前の私のブログでも中国からYouTubeへの投稿がブロックされたことを紹介しました。これは、チベット騒乱の直後だったので、さもありなん、という感じでしたが、オリンピック関係で情報規制が厳しくなっているのは、すでに報道されているとおりです。

 前置きが長くなってしまいましたが、以下、フロリダからの貴重な感想をご一読ください。
(以下、感想全文)

小原先生、

先生の大学講座のPodcastを聞いて、色々考えさせられました。アメリカでは、聞けない新鮮で鋭い内容(というか、コチラで言ったら危ない内容もありました)がうれしかったです。アメリカは、宗教が絡むと決して言論の自由があるとは言えない感じているからです。

私、米国に来て20年以上経ちます(日本語が幼稚になっているので、その点ご勘弁下さい)。2005年まで、NYで銀行員をしており、同時テロの時犠牲者が出た邦銀で18年程おりました。

米系企業の担当であったせいか、アメリカ人はもとより、世界中から来た人たちと一緒に働きました。パキスタン人(モスレム)、Anglicanのスリランカ人、ユダヤ人.お金が神様の中国人。皆一流大学卒もしくは、MBAを持つ人ばかりで、しかも外国人は金持ちの子女が多かったです。その他、モルモン教徒、エホバの証人、アメリカ黒人のモスレム等もおりました。そういう環境に於いては、プロフェショナルで、宗教が原因で確執がおこる事もありませんでした。また、客観的に興味深い話しも聞ける環境でした。

私は無信仰ですが、神様の存在を信じるという立場をとってきました。そして、日本というのは、宗教に関しては特殊は土壌がある事を説明しました。私の両親は神様の事を語った事はないし、せいぜい罰があたるとか、"悪い事したら、神様がちゃんと見てるよ"程度のものです。だた、私は国際政治に大変興味を持っておりますので、宗教の話大好きですし、色々な質問もぶつけてきました。確かに、"If you don't believe in Jesus, you will go to hell"と言われた事も何度もあります。キリスト教をドグマ的に信じている人(俗にいうFundamentalist)は、神を恐れ、悪魔の存在を常に意識しているのではないかと気の毒に思う事もありました。

私は、今まで悪魔という存在を意識した事無いですし、神様と私の関係はあくまでも個人的なもの、今までの人生で自分で模索してきたものだと説明しています。
この様な考え方は、無信仰な日本人には当たり前かと思います。ただ、外に出て考えてみると、こういう日本の土壌は諸外国と比べると、大変ユニークであるということです。

確かに、2004年にブッシュが再当選した時、私やリベラルな友達はFundamentalistを忌み嫌いました。私は、"キリストは弱者の味方、平和を説いいて時代を変えたRevolutionaryであり、彼は革新的で超リベラルだ"と議論しました。過半数のアメリカのキリスト教の信者が支える共和党は、タカ派、金持ちの味方。凄い矛盾だと思います。堕胎の廃止、同性愛者同士の結婚阻止という事が、平和や弱者救済より重要視されているからです。

幸か不幸かブッシュが失策を繰り返しており、熱心なキリスト教徒たちも、様々な観点から見直しをしており、その中からも政教分離を推進するムーブメントも出ています。

一点気になったのは、無神論者に関する事です。色々本も出ていますが、無神論者の多くは、彼らなりに葛藤があり、試行錯誤し、挫折し、結果として無神論になった例が多いと思います。最近、Richard Dawkinsのインタビューを見ました。彼も、神がいないという事も科学で証明できないと言っています。極端なリベラルの人たちは、宗教を信じてる人の事、"喋る蛇を信じる連中"と軽視する傾向もあります。
https://www.youtube.com/watch?v=DRmedaIWBp0&eurl=https://video.google.com/videosearch?q=richard dawkins&ie=UTF-8&oe=utf-8&rls=org.mozilla:en-US:official

また、US バークレーのレクチャー(長いですが)も見る価値ありました。

https://richarddawkins.net/article,2989,Richard-Dawkins-Lecture-at-UC-Berkeley,Richard-Dawkins

彼の宗教批判は、敵対的過ぎると思います。彼は、自分のアカデミックな経験と理性で論理を立証しようとしていますが、世の中にはそれだけでは説明出来ない現象や現状があり、宗教を必要とする人が存在し、神の存在を信じる人がいるのだという事です。それでも、自分と違う考え方をする人たちを理解するという柔軟性も必要ですし、それが紛争を減らす事にもなると思います。彼のスピーチを聞いたお陰で、スピノザとか、理神論とかを考えるチャンスが出来ました。

先生のおっしゃった様に、ハマスをテロリストと呼ぶ前に、何故彼らがああいった行動をするのかという事を考証するべきという事には、大賛成です。ただし、こういう発言をアメリカでするのは、非常に勇気のいることです。アメリカはイスラエルの番犬みたいなもので、残念乍ら、ハマス=テロリストであるということしか認められません。私の尊敬するNorm Chomskyも、イスラエルを批判してきましたが、彼もアメリカでは、超左翼とレッテルを貼られています(とはいえ、彼の講演はロックスター並みの人気です)。

先生がおっしゃっていた通り、他の宗教や宗派を批判する傾向(ダライ・ラマを尊敬していると行ったら、悪魔を信仰していると言われた事あり)は、大きな間違いだと思います。それは、極端な言い方、アメリカのキリスト教の宗派がフランチャイズ化しているからではないでしょうか。例えば、最近人気のある、Joel Osteenも、あれは幼稚園向けだと批判されています。わかりやすい(すぎる)説教ですし、クリスチャンではない私でも明るい気持ちになります。

最後に、最近面白いPodcastを見たので、是非見て頂きたいと思います。ユダヤ人のジャーナリストが、一年間聖書に書かれていると通りの生活をしてみた体験記が出ています。彼もFundamentalist批判が動機になっており、それじゃultra-fundamentalistになってやろういう試みです。
https://www.ajjacobs.com/books/yolb.asp

Podcastのリンクは、
https://www.ted.com/index.php/talks/a_j_jacobs_year_of_living_biblically.html

彼、スピーチ上手ではありませんし、半分冗談みたいですし、NYのユダヤ人らしい懐疑的部分も見受けられますが、なかなか興味深い結論を出しています。

国際人を志す人たちには、聖書を初め、アブラハムに起因する宗教の知識は必須だと思います。国際紛争は政治だけではなく、経済にも大きく作用します。最近の原油高も、地政学的リスクを反映しています。地政学的リスクの殆どは、宗教に絡んだ摩擦による物です。そういう意味でも、小原先生の講座は大変意義があり、一人でも多くの人に聞いて欲しいと思います。今後もご活躍、楽しみにしております。

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