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「仏教から問う原発依存」(朝日新聞、11/03)

 昨日に続き、原発関係の話題を。
 本日の『朝日新聞』朝刊に「仏教から問う原発依存」という興味深い記事が掲載されていました。仏教界で、こうした動きが広がっていることは断片的には知っていましたが、この記事を読んで、現状を学ぶことができました。
 どの宗教、宗派にも、原発について賛成派・反対派がいることは間違いありませんが、いずれの立場であっても、賛成・反対の表明だけで終わらない議論の積み重ねがなされていくことを願っています。原発については技術論からの評価が圧倒的に多く、倫理的側面からの議論はまだまったく不十分であると言ってよいでしょう。その意味で、宗教界が動き出すというのは幅の広い議論を展開していくために望ましいことであると思います。
 宗教界での議論が、将来の日本社会のライフスタイルやエネルギー政策についての提案にまで至ることを願わざるを得ません。
 以下に、朝日新聞の記事を貼り付けておきます。

「仏教から問う原発依存」(朝日新聞、2011/11/03)
 原発を問い直す動きが仏教界に広がっている。真宗大谷派や臨済宗妙心寺派などの主要宗派でこの秋、原子力に依存した社会との決別を求める宣言や催しが相次ぎ、曹洞宗大本山永平寺(福井県永平寺町)は2日、原発への依存を考えるシンポジウムを開いた。
■「生命の理論に合わぬ」
 「原発を選ばないという生き方」と題した永平寺のシンポジウムは、寺の僧でつくる組織「禅を学ぶ会」が企画。会場には約300人が詰めかけた。
 同寺の松原徹心副監院は冒頭、高速増殖原型炉に「もんじゅ」、新型転換炉に「ふげん」と名付けられた1970年前後を振り返った。当時の貫首は命名を聞き、「それはいいことだ」と語ったとし、「両菩薩(ぼさつ)の智慧(ちえ)と慈悲をいただくことで、多くの方の幸せを願ったのだろう」と話した。副監院は閉会後、「原子力は地球上の生命の理論に合わないということを知らされた」と述べた。
 講演した福島県飯舘村の酪農家長谷川健一さんは、「足手まといだろうから」と102歳のおじいちゃんや93歳のおばあちゃんが自殺し、福島の女子高校生たちが「私たち結婚できねえべな」と話しているというエピソードを紹介した。反原発を訴え続けてきた明通寺(福井県小浜市)の住職中島哲演さんは「原子力施設で被曝(ひばく)者が生み出されていることに思いをはせてほしい」と訴えた。
 同会の西田正法事務局長は「原発が動く限り、地下に埋めるしかない放射性廃棄物が生み出されている。お釈迦様は将来生まれてくる命を慈しみ、『幸せであれ』と語った。便利さと快適さを求め、子孫に負の遺産を残していいのか、それを考えたい」と説明する。僧たちにも広く考えてもらいたいと、一般参加者向けのシンポジウムの後、同内容の勉強会を寺の内部で開いた。
■宗派超え宣言・研修
 真宗大谷派は、「原子力問題に関する公開研修会」を9月9日に開いた。原発が集中する若狭湾沖で大地震が起きた場合の被害想定を地震学者から学んだり、福島県南相馬市の被災者から話を聞いたりした。
 同派は大震災直後の3月19~28日、「宗祖親鸞聖人七百五十回御遠忌」の第1期法要に代え、「被災者支援のつどい」を開いた。安原晃宗務総長はあいさつで「凄惨(せいさん)な事故を生む原発に頼る生活を営んでいるのは、ほかならない私たち」と、原子力に依存した生活の見直しを促した。
 茨城県東海村で起きた臨界事故後の2002年、同派は「いのちを奪う原発」を出版している。同派の担当者は「これらの活動が土台にあり、今回の事故でも宗派として原発を問う基本姿勢が明快にできた」と話す。
 3365カ寺からなる臨済宗妙心寺派も、9月の定期宗議会で「原子力発電に依存しない社会の実現」をうたった宣言を31議員の全会一致で採択した。原発に言及した宣言は初めてで、妙心寺公式サイトの冒頭に掲げている。「将来ある子供たちのために一刻も早く原発依存から脱却し」「仏教で説く『知足(足るを知る)』を実践し、持続可能な共生社会を作るために努力する」としている。
 京都府の本山や寺院約800カ寺で作る京都府仏教連合会も今月5日、以前から放射線の低線量被曝の危険性などを訴えている藤田祐幸・長崎県立大シーボルト校非常勤講師を招き、「原発依存社会への警鐘」と題した講演会を開くことにしている。(荻原千明)

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