KOHARA BLOG

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趙 載國「韓国の教会成長の明と暗」

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 1月25日、神学部・神学研究科主催の公開講演会として、趙 載國先生(韓国・延世大学教授)に「韓国の教会成長の明と暗」と題して講演をしていただきました。私は司会を務めました。
 趙先生は、今年度、神学部の客員教授として滞在され、2月には韓国にお戻りになる予定です。同志社をこよなく愛され、韓国と日本の懸け橋の役割を果たしてくださっています。
 趙先生の本来のご専門は、近代日本におけるキリスト教史で、それを基軸に、キリスト教と文化の問題にも深い造詣があります。今回は、韓国教会の歴史的背景や、その現況について話をしていただきました。
 韓国は、人口のおよそ三分の一がクリスチャンで、宗教としては最大のものとなっています(二位は仏教)。教会が大きく成長してきた背景だけでなく、それが生み出した歪みについても話してくださいました。
 隣国同士とは言え、キリスト教が置かれている社会的状況や、その特質にはずいぶん違いがあることを、あらためて学ぶことができました。
 以下、簡単ではありますが、メモをつけておきます。

■韓国の教会
ヨイド純福音教会:信徒数は75万人。世界のメガチャーチの10のうち7教会が韓国にある。
韓国全体の信徒数は861万人。教会は5万8千。
海外宣教師の数は韓国が世界の半数を占める。

■キリスト教の韓国伝来
1884年にHorace N. Allenが訪韓。
キリスト教の受容:天然痘の犠牲者をキリスト教の病院が受け入れ、キリスト教が徐々に韓国社会に受け入れられていく。

■韓国の教会成長の原因
1)唯一神を信じる教会
2)民衆教会:聖霊中心の福音理解
3)民族教会:日本による植民地時代、クリスチャンは独立運動に参加。神社参拝に反対。

■韓国人の伝統的な神理解
三位一体の神概念に対応する理解:檀君神話、ハナニム=唯一なる神
檀君神話そのものがキリスト教の影響を受けたのではないかと主張する学者もいる。

■初期教会信徒の信仰形態
初期の信徒:Rice Christian(食べ物を求めて教会に)、宣教師の手伝い、語学の先生、学校の先生など。
宣教師たちは聖書を漢文ではなく、民衆の言葉であるハングルに翻訳した。それは一般の人々にキリスト教を伝える上で大きな役割を果たした。

■韓国教会の民衆的信仰
アメリカ宣教師たちの福音的な信仰と宣教
教会中心的な宣教:自立政治、自立経営、自立宣教
聖書のハングル翻訳と普及

■愛国忠君のキリスト教の形成
1907年、大復興運動
1919年、三一独立運動で民族代表33名の内16名が教会指導者であった。
神社参拝強要に対し拒否運動が起こる。
知識人の教会と庶民の教会は初期の頃から存在していた。

■韓国教会の信仰的性格
教会主義:福音派と社会派にかかわらず、教会を大切にする。
保守信仰=世俗的/倫理的

■教会成長期の神学思想(三つのタイプ)
1)根本主義神学:聖書を文字通りに信じる
2)歴史主義神学:自由主義、預言者的、独裁政権に抵抗
3)文化主義神学:保守信仰と自由神学の組み合わせ。他宗教がキリスト教において成就したという考え方。

■韓国教会の課題と未来
・世俗主義的信仰
・倫理意識の不在
・社会的信頼の墜落:韓国にはアンチ・クリスチャンが多い。
・理論神学の衰退:実践神学が中心
・牧師の過多:神学校の乱立
・海外宣教師の問題:競争的宣教
・日本宣教の課題

■未来へ
・新しいタイプの教会の出現
・教会から信仰へ
・信徒の世代交代
・宣教資源の開発
・政治的な期待:クリスチャンの政治家の出現
・中国教会との協力:日本型教会と韓国型教会がある。
・日本における韓国人留学生に対する宣教

韓国教会に知性を、日本の教会に霊性を

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