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CISMOR講演会「「アマルナ」前夜のエジプト」(近藤二郎)

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 2月9日、同志社大学 今出川キャンパス神学館礼拝堂で、日本オリエント学会と一神教学際研究センター(CISMOR)共催の公開講演会が開催され、近藤二郎先生(早稲田大学文学学術院 教授、早稲田大学エジプト学研究所所長)により「「アマルナ」前夜のエジプト―アメンヘテプ3世治世末期のテーベ」という講演をしていただきました。
 この数年、年に一度(あるいは二度)、日本オリエント学会との共催講演会を企画してきました。普段、CISMORがめったに扱うことのない古代エジプトなどの話を聞くことができる貴重な機会となっています。
 アマルナは、古代エジプトの二つの都、メンフィスとテーベのちょうど中間に作られた都市ですが、アマルナ時代に一神教化が進められ、これが後にモーセを中心として成立するイスラエルの一神教に影響を与えたのではないかという説があります。アテン賛歌と詩編の類似性なども指摘されてきました。
 講演では、アマルナが作られた目的や、それが古代エジプト史において果たした役割などが、近藤先生が目下かかわっているエジプトでの発掘調査などを交えて、説明されました。アマルナ時代の王たちは、後に王名表から消されるなど、多神教を中心とした古代エジプト史の中の特異な「断絶」としてとらえられがちでしたが、近藤先生によれば「断絶」ではなく、むしろ「ターニング・ポイント」として考えられるとのことでした。
 テーベのアメン信仰が強くなりすぎた時代に、その影響力を「初期化」し、南のテーベと北のメンフィスとのバランスを回復するために、唯一神信仰を導入したのではないか、との近藤先生の仮説は興味深いものでした。

 古代エジプト史に関して私は疎いのですが、それだけに多くのことを新鮮に聞くことができました。質疑応答の中では、現代のエジプトの状況についての質問も出されました。革命以降、かつての警察の機能を軍隊が果たすようになったが、十分に手が回っていないので、全体的に治安が悪化しているとのこと。発掘現場もセキュリティが悪化しており、盗掘が続いているとのことでした。
 来週から私もエジプトに行きますので、現状の説明についても大いに関心をそそられました。

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