小原On-Line

小原克博: 2010年9月アーカイブ

 10月2日(土)に宗教倫理学会の学術大会が開催されますが、その一部として、公開講演会があります。関心のある方はお越しください。

http://www.jare.jp/activity/11-2010.html

■公開講演会とパネルディスカッション

第1部 公開講演(13:45‐15:00)
講演題 : 「価値多元社会における倫理、形而上学、宗教」
講 師 : 品川哲彦(関西大学文学部教授)

15:00‐15:15 <休憩>

第2部 パネルディスカッション(15:15-17:00)
パネリスト 
1) 品川哲彦(講演者)
2) 高田信良(龍谷大学)
3) 小原克博(同志社大学)
司会 : 小田淑子(関西大学)

 私は、同日午前中に研究発表することになっているのですが、今週から始まった授業の準備に忙殺され、まだ手つかずの状態です。かなりやばいです(いつものことですが・・・)。
 書評「宗教のポリティクス」(『毎日新聞』2010年9月26日、朝刊)を追加しました。
 限られた紙面の中で、ポイントをうまくまとめてくださっています。
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 9月23日、京都国際会館で開催されたWCRP(世界宗教者平和会議)40周年記念事業 公開シンポジウム「日本の宗教とイスラームとの対話──まほろば精神とイスラームの平和観」に参加してきました。
 最初に、庭野日鑛・立正佼成会会長や大谷光真・浄土真宗本願寺派門主(右写真)の挨拶があり、その後、エジプトのアズハル大学の先生による基調講演、パネルディスカッションと続きました。

 エジプト、インドネシア、イラン、イラク、パキスタン、パレスチナ、サウジアラビア、トルコなどからイスラーム指導者が来日して、今回の一連の記念事業に参加しているようです。
 「日本の宗教とイスラームとの対話」という大きなテーマですが、普段、対話しているわけではないので、出てくる議論も、おおざっぱなものにならざるを得ません。9月21日付けで採択されたメッセージが配布されましたので、参考まで添付しておきます。やさしい英語で書かれているので、読んでみてください。


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 ほとんどが差し障りのない内容ですが、ジハードの言及しているのはおもしろいと思いました。特に「小ジハード」(lesser Jihad)は「自衛権」を含んでいますので、このあたりがもっと突っ込んで議論されるるとよかったのですが。
 右写真のようなパネリストが仏教・神道・イスラームの立場から短い発表をしました。戸松氏が、仏教はいかなる状況にあっても暴力を否定すると強調されましたので、こうした主張と「自衛権」の問題とが関係づけられると、「対話」の内実が形成されていくのですが、そこまでは至りませんでした。

 上のメッセージ文の中でも言及され、パネルディスカッションでも指摘されていたのが、イスラームはテロリズムとは関係ないということでした。平和を求める宗教はテロと無関係、と言いたい気持ちはわかりますが、それでは問題解決に至らないのではないでしょうか。イスラームに限定する必要はもちろんありませんが、「暴力にかかわっている宗教は、もはや宗教にあらず」「過激なムスリムは真のムスリムにあらず」「宗教が悪用されている」という言い方になってしまうと、見るべき問題の深部にいつまでたっても、ふたをしてしまうことになりはしないでしょうか。

 とはいえ、何のコンタクトもないよりは、こうした日本宗教の代表者とイスラームの代表者の出会いがあることは、はるかに望ましいことです。欲を言えば、恒常的な関係と関心が形成されるべきでしょう。両者とも、互いのことをほとんど理解していないのですから。

 「トップの一言──多宗教の研究 日本でこそ」(『朝日新聞』(京都版)2010年9月11日、朝刊)を追加しました。
 私が自己紹介しているような文体になっていますが、朝日新聞の記者の方が私へのインタビューからまとめてくださった記事です。限られた紙面の中で、うまくまとめてくださっています。
 実際には2時間以上話しましたが、紙面の都合上、要点のみとなっています。
 9.11についても、あれこれ話し、文中にも、9.11以降、寛容さが失われた、と記されています。で、この記事が掲載されたのが、狙ったかのように、9月11日! さすが朝日新聞。配慮が行き届いています。
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 8月18日(土)、第23回国際霊長類学会大会 市民公開講座「暴力の起源とその解決法」が京都大学百周年時計台記念館百周年記念ホールで開催されました。プログラムは下記の通り。

13:30-13:40 挨拶 江崎信芳(京都大学副学長)
13:40-14:00 趣旨説明 山極寿一(国際霊長類学会会長)
14:00-15:00 基調講演「チンパンジーと人間の戦争の起源」
       Richard Wrangham(Harvard大学教授)
15:20-15:50 講演「狩猟採集民社会と暴力」
       市川光雄(京都大学名誉教授)
15:50-16:20 講演「宗教と暴力」
       小原克博(同志社大学教授)
16:30-17:30 総合討論
       梶田真章(法然院貫主)
       黒田末寿(滋賀県立大学教授)
       小長谷有紀(国立民族学博物館教授)
       長谷川寿一(東京大学教授)

 山極先生の趣旨説明が興味深かったです。日本の霊長類研究は、1948年、今西錦司より始まります。その当時を知っている河合雅雄が今西錦司に、なぜ霊長類の研究を始めたのかと聞いたそうです。答えは「戦争を考え直すためだ」。
 まさに今回のテーマに関係するわけですが、猿を含む霊長類を研究することにより、人間の暴力の起源に迫ろうとする動機付けが初期の頃からあったことがわかりました。
 日本の霊長類学は、世界に10年ほど先駆けて始まったそうです。原因の一つには、日本にはニホンザルがいたことがあげられていました。霊長類研究は、きわめて新しい研究分野であることを認識させられた次第です。

 ハーバードのランガム教授の講演も興味深かったです(右上写真)。組織的な暴力行為へと及ぶチンパンジーのショッキングな映像などを織り交ぜながら、暴力の起源を探り、人間における戦争類型との比較がなされました。ライバル集団を排除するため、という戦闘に至る基本的な動機付けは、チンパンジーも人間も変わらないようです。
 ランガム教授の著作は、『男の凶暴性はどこからきたか』など日本語になっているものもあります。

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 私は「宗教と暴力」と題して話しました。国際霊長類学会という文脈を意識して、人間と動物の関係を織り交ぜました。
 プレゼン用の資料をアップしておきましたので、関心ある方はご覧ください。


 国際霊長類学会には1000名もの研究者が集まり、その内、800名は海外から来たそうです。驚きの数字です。学会終了後、日本国内のフィールドワークに出かけることができるのも魅力の一つのようです。
 この分野、日本がかなりがんばっているように感じました。
 暴力の起源と解決法を考えるとき、霊長類との比較研究というのは、人間のあり方を客観的に見据えるために、きわめて有効な視点であると、今回再認識させられました。
 「生き方を再肯定・再解釈するために──価値観を相対化する知恵を」(『京都新聞』2010年9月7日、朝刊)を追加しました。
 拙著『宗教のポリティクス』を下地にしたインタビュー記事になっています。本の主題からはかなりはずれている部分もありますが。
 見出しや本文に「経済教」という言葉がありますが、これは記者の方の造語。私はこういう言葉は使いませんが、インタビューの中で、戦後の日本人の精神状況・宗教事情について意見を述べました。
 関心ある方はご一読ください(上記リンクのPDFファイルが読みやすいです)。
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 目下、CIMOR が文部科学省から受けている「私立大学戦略的研究基盤形成支援事業」の中間評価のための報告書作りのために忙殺されています。2008年度から2012年度までの5年間にわたる助成金を得ていますが、今年はその中間時期にあたるために中間評価を受けなければなりません。
 中間評価が悪ければ、助成は打ち切られるという恐ろしい文言がありますので、あまりのんきにもしていられないわけです。それにしても、書類作りはしんどい・・・

 そのような中、今日は、スペイン・マドリッドの Casa Arabe (INTERNATIONAL INSTITUTE FOR ARAB AND MUSLIM WORLD STUDIES) からの来客をお迎えしました。
 この研究機関は、スペイン外務省の外郭団体のようですが、聞いてみると、かなり本格的にイスラム研究に取り組んでおり、アラブ世界のイスラームおよびヨーロッパにおけるイスラームに大きな関心を払っているようです。
 今週土曜日、東京でスペイン政府のプログラムがあるようで、そのサポートのために来日されたのですが、わざわざ京都に立ち寄ってくださり、ありがい限りです。世界における CISMOR の知名度も少しずつ向上しているということでしょうか。
 スペインは、一神教の歴史にとって重要な場所ですが(共存そして衝突の両面において)、これまで CISMOR はスペインとのコンタクトは持っていませんでした。その意味では、今後、研究領域を広げていく上で、今回の来訪はよいチャンスになりそうです。
 「頭脳循環を活性化する若手研究者海外派遣プログラム」のヒアリング審査を終えました。かなりシャープな質問が矢継ぎ早に投げかけられましたが、何とか冷静に答えることができたと思います。これで、やるべきことはすべてやりましたので、あとは結果を待つだけです。

 ヒアリング終了後、昔の教え子で、現在、上智大学の大学院生である Alec LeMay と上智大学前で会い、食事を共にしました。彼は博士論文に取り組んでいるのですが、いろいろ悩みを抱えており、相談に乗りました。日本社会におけるカトリック移民の研究をしています。

 さて、話題は変わりますが、Amazon に著者セントラルという新しいサービスができました。早速簡単なものを作ってみました。著者紹介や著作一覧を見ることができるようになっています。動画もアップできるようなのですが、今、その余裕がありませんので、動画は少し先送りです。編著や訳書など、「著者」として名前が載っていない本は、この一覧には載せることができないようです。
 特別、目新しい情報が載っているわけではありませんが、こうしたサービスが拡充してくると、本探しには役に立つと思います。

■ Amazon.co.jp: 小原克博 作品一覧、著者略歴

 今、四谷に来ています。日本学術振興会による「頭脳循環を活性化する若手研究者海外派遣プログラム」のヒアリング審査があるため、会場近くの四谷に宿泊している次第です。まだ審査途中なので、どのような申請をしたのかは現段階では言えないのですが、これは、大学院後期課程学生など若手研究者が海外で研究するための包括的な助成プログラムです。今回、そのプログラムに CISMOR が母体となって申請をしました。海外での研究を志している方々のためにも、ヒアリング審査をうまく乗り切り、採択へとこぎつけたいと願っています。

 CISMOR 幹事の富田先生も一緒に来ていますが、夕方、富田先生と新宿3丁目にある紀伊國屋書店新宿本店に立ち寄りました。かなり以前来たことがあるのですが、すっかり場所を忘れており、少しうろうろしました。到着後、関心のあるフロアーを歩きましたが、品揃えがよいので、興味が尽きません。
 宗教・哲学関係のフロアーを歩いていると、偶然、私の近著『宗教のポリティクス』を発見! おー、こんなところにいたのか〜と感動の対面を果たしました(笑)。

 明日のヒアリングに備えて、最後の準備をしたいと思います。
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 9月4日(土)、ホテル日航大阪(大阪・心斎橋)で開催された大阪トルコ文化センター主催のラマダン食事会に参加してきました。
 トルコ通の内藤正典先生(同志社大学グローバルスタディーズ研究科)に誘われたのが、そもそものきっかけで、普段、私はトルコとの特別の接点を持っているわけではありません。しかし、(まだアナウンスするのは早いかもしれませんが)今年12月にイスタンブールで国際会議を予定しており、そこで私も話をすることになっているので、そのご縁で、今回のラマダン食事会にも招かれた次第です。
 30数名ほどの方々がいましたが、他のテーブルの様子はよくわかりませんでした。私のテーブルには、オルジャイ・オジャクル氏(トルコ文化センター理事長)、内藤先生、同じくグローバルスタディーズ研究科の加藤千洋先生、大阪大学法学研究科の河田先生らがいました。
 加藤千洋先生は、長らく朝日新聞の記者を務めた方で、中国を中心にアジアからの報道で活躍された方です。私も名前は知っていましたが、今回、はじめて顔を合わせました。
 上の写真は、理事長はじめ、大阪トルコ文化センターの方々です(iPhone 4で撮ってもらったのですが、光の加減で、ちょっと画質が悪いです)。みなさん、日本語がおじょうずで驚きました。また、とてもフレンドリーな方々ばかりでした。

 今年は、トルコにおける日本年だそうです。日本との友好120年を記念して、様々な行事が予定されています。京都とイスタンブールが、パートナー・シティの締結をするそうです。

 トルコでは、目下、政治的な大きな節目を迎えようとしています。9月半ばにレファレンダムがあり、建国以来の厳格な世俗主義が、少し緩和される可能性があります。もう少し具体的に言うと、これまで公共の場で禁じられていたヒジャーブなどの着用が認められる方向に向かいつつあります。
 政教分離論を扱う中で、私自身、トルコの世俗主義には関心を寄せてきましたが、もう少し本格的に首を突っ込んでみようかと思っています。
manabu201008.jpg 「現実的脅威の中で、どのように平和主義・平和憲法を貫いていくのか」(『まなぶ』(労働大学出版センター)増刊号「日米安保50年、これから」)を追加しました。
 「日米安保50年」を特集した増刊号ですが、私は安全保障の専門家ではありませんので、そのあたりはあまり触れず、平和主義の理念と現実の葛藤やすり合わせの部分に焦点を絞っています。
 編集部に、高校生でもわかるくらいにやさしく書いて欲しいと注文されましたので、読みやすい文体にはなっていると思いますが、内容的に本当にわかりやすいかどうかは、あまり自信がありません。
 上記テーマに関心ある方は、ぜひご一読ください。

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