小原On-Line

小原克博: 2011年6月アーカイブ

20110628.jpg
 標記の国際会議が、本日と明日の二日にかけて同志社大学で行われています。主催の本体はグローバル・スタディーズ研究科ですが、CISMORとユネスコが共催する形になっています。「人道的介入」をアジアの文脈でどのように考えるのか、というのがメインのテーマで、各地から15名ほどの外国人研究者が招かれています。
 この会議の仕掛け人は、グローバル・スタディーズ研究科の特別客員教授のサネ先生です。サネ先生については、6月2日の記事で紹介しています。
 私は最初の挨拶をして、あとは一参加者として参加していますが、仕事の合間をぬっての参加なので、残念ながら、すべてのセッションに参加することはできそうにありません。
 表内容はきわめて興味深く、サネ先生の人脈の広さに驚くと共に、学生たちの献身的な働きぶりが新鮮でした。
 京大法学部の位田先生がコメンテータとして参加しておられました(位田先生と私は倫理委員会で一緒。位田先生とサネ先生はユネスコで一緒)。包括的かつシャープなコメントには脱帽です。
 6月4日の結婚式披露宴の際のアレックと彼の先生たちとの尺八共演と、6月中旬の南京訪問の際、中華料理店で聞いた演奏の二つをYouTubeにアップしました。日本と中国という違いはありますが、伝統音楽という点で、何かしら共通した趣を持っているかもしれません。
 南京での演奏の方は、両脇のお客さんたちがはいるのを避けるため、iPhoneを縦向きにして撮影しています。動画が縦長になっているのは、そのためです。

 
 6月25日、同志社大学アメリカ研究所の研究プロジェクトの一つ "US Policy in the Middle East and Its Impact on Middle East-Japan Relationship"(研究代表者:サミール先生)に参加しました。サミール先生に誘われて、はじめての出席だったのですが、到着してプログラムを見ると、Chair personのところに私の名前が・・・ 参加者の一人として議論に参加するつもりだったのですが、結局、最初から最後まで前の席に座っていることになりました(写真を一枚も撮ることができませんでした)。
 今回のテーマは "US and Japanese Policy Towards Changing Middle East" ということでスピーカーは、同志社の中西先生(グローバル・スタディーズ研究科)、カイロ大学の Mohammad Selim 先生、コネチカット州立大学の Norton Mezvinsky 先生の三人でした。
 中西先生は、アラブの春がアメリカとイランの外交関係にどのような影響を及ぼすかを、最近、中東を歴訪した体験に基づきながら話してくれました。
 Selim 先生はエジプトの情勢を非常に詳しく話してくれました。論点は多岐にわたるのですが、民主化は絶対に外発的には起こらないこと(アメリカがいくら介入しても意味がない。かえって邪魔をしている)。民主化の行方として、トルコの世俗主義などがモデルとして指摘される場合があるが、アラブ世界にはそもそも世俗主義は存在しないこと。むしろ問題は、シャリーア(イスラム法)をどのように(どの程度)適用させるかという点にあるといった指摘は興味深いものでした。
 Mezvinsky 先生は、アメリカが人道的介入をとなえて、リビアに介入しているが、アメリカの大義はまったく一貫性がないことを、バーレーンやシリアの例をあげて痛烈に批判していました。
 30分ずつのスピーチのあと、臼杵 陽先生(日本女子大学)、塩尻和子先生(東京国際大学)、中村覚先生(神戸大学)によるコメントを受け、ディスカッションに入りました。
 全体として活発な議論が交わされ、楽しめたのですが、司会は時間配分などを絶えず気にしなければならないので、疲れます。研究会続きですが、来週もいろいろあるので、しばらくは辛抱強く、がんばるしかなさそうです。
20110624.jpg
 6月24日、キャンパスプラザ京都で宗教倫理学会の定例の研究会を開催し、今回は浄土宗大蓮寺・應典院の秋田光彦氏を講師として招き、「無縁社会を、お墓でつなぐ~生老病死のコミュニティ」と題して話をしてもらいました。
 今年度の研究テーマは「死生観の変容──葬送儀礼を問う」で、私は研究プロジェクト委員長を務めています。
 應典院が取り組んでいる様々な働きを紹介してもらい、さながら仏教の現代的可能性を実験しているような感じです。発表内容の簡単なメモを記しましたので、その一端を感じ取っていただければと思います。さらに関心のある方には下記の本をお薦めします。

 6月4日、カトリック梅田教会(東京都足立区)で行われた結婚式に出席した際、フィリピン人メンバーたちの歌声がすばらしかたため、急ぎ撮影した動画をYouTubeにアップしました。参列者が聖体(あるいは祝福)を受けている間に歌われたものです。動画の中で、参列者が歩いているのはそのためです。
 この教会は、外国人労働者が多く住んでいる地域にあるとのことで、メンバーの多くを多国籍の外国人が占めていると、結婚式の中で司祭が述べていました。
 結婚式後の昼食会の食事もフィリピンの方々の手作り料理でした。
 こういうインターナショナルな雰囲気は、残念ながら日本のプロテスタント教会にはほとんどありません。

 動画中、最初の曲は(たぶん)タガログ語で歌われています。二番目の曲は、けっこう有名な"Power of Love"です。

20110619.jpg
 6月19日、TBS(関西では毎日テレビ)サンデーモーニングの「考・震災」のコーナーで、ほんの少しの時間、インタビューが出ていました。あまりにもあっという間の出来事だったので、何を言っていたのか、よくわからないほどでした(笑)。声が出ていたのは、30秒程度でしょう。テレビ的に一番わかりやすそうな発言を選び取ったという感じです。
 キャプションには「成長神話」、「必要悪として原子力を是認せざるを得ない」(と考えられてきた)、「国民全体が下支えしてきた側面もある」という言葉が出ていました。
 一瞬の出来事でしたので、ご覧いただいた方は肩すかしをくったかもしれませんが、コーナー全体の構成としては、まずまずまとまっていたのではないでしょうか。いずれにせよ、わざわざご覧いただいた方、ありがとうございました。
 南京滞在中にTBSテレビから取材依頼があることを聞き、帰国日に合わせて取材に応じることができました。日曜日の朝8時から10時までやっているTBS サンデーモーニングの「考・震災」というコーナーに私の顔が少し出てくる予定です。
 金曜日、私の研究室で撮影を済ませ、6月19日の日曜日の番組の中に組み込まれることになっています。
 「考・震災」は9時半頃から始まるとのこと。インタビューは長かったのですが、実際の映像では編集されて1分程度になると思いますが、関心ある方はご覧ください。
 どのように編集されるのか、私も楽しみにしています。
20110617.jpg 朝5時前に起きて空港に向かったものの、管制塔のトラブルか何かで、機内で1時間半ほど待たされ、大学に着いたのは3時ちょうどでした。それからTBSテレビの取材があり、その後、午後8時まで授業があり、という具合に、なかなかハードな一日でした。

 右の写真は、今回の国際シンポジウムの主催者の Xu Xin 教授です。もともと英文学が専門で、英語がとてもうまい方です。英文学を研究する中で、ユダヤ教に接し、そこから今日あるような形にのめり込んでいくことになったという異色の経歴の持ち主です。しかし、中国のユダヤ学は彼によって牽引されてきたと言ってよいでしょう。
 CISMOR主催の国際会議でお呼びしたいと考えています。

20110616_1.jpg
 シンポジウムの二日目、最初のセッションの司会をし、その次のセッションで発表をしました。私の発表タイトルは "Monotheism, Nationalism and the Postmodern Resurgence of Religions: Focusing on the Modern and Contemporary Japan"というものでした。
 セッションの中でも、またその後も、多くの質問・コメントをいただいたので、手応えありという感じです。ユダヤ学、ユダヤ文学、聖書学、ユダヤ思想関係が多い発表の中では、かなり異色の発表として目立ったかもしれません。

20110616_2.jpg
 シンポジウム全体のクロージング・セッションで、今回の主催者である Institute for Jewish Studies の所長、Xu Xin 教授が興味深い話をしていました。
 今回のようなテーマの国際会議は、10年前の中国であれば、絶対に認められなかった。5年前でも、かなり難しかった。今日、こうしたテーマの国際会議を開くことができるようになった点から、中国社会が、一定の枠組みの中に置かれながらも、少しずつ変化していっていることを知ってほしい、という話があり、その語りに共感しました。
 アメリカの視点から見れば、中国社会の「宗教の自由」はまったくひどい有様かもしれませんし、また、現実に、北京で家庭教会の関係者が多数逮捕されるという事件が3月にありました。しかし、10年、20年という長さで測れば、中国社会は着実に変化していることもまた事実です。その変化が遅すぎると、怒りと不満をぶつけるべきなのか、あるいは、その変化を、時には寄り添いながら見守っていくべきなのか。私は、後者の道を選びたいと思っています。

 シンポジウム終了後に、バスで移動して、儒教寺院が集まる観光スポットを見学しました。実は、昨年の夏にも、私は同じ場所に連れて行ってもらっています。しかし、あらためて説明をしてもらったり、参加者とあれこれの会話を交わしながらの散策は楽しいものです。
 今回は、多くのユダヤ人、ユダヤ教研究者と話ができて、ユダヤ人やユダヤ教を取り巻く状況を、より深く理解することができました。本では学ぶことのできない知識や感触を得ることができたという意味でも、今回のシンポジウムに参加したことに意義があったと思います。

 明日は、早朝5時にホテルを出て、空港に向かいます。昼過ぎに関空に着き、午後から取材が一件、その後、夕方から授業が2コマ続きます。すでに、かなり疲れているのですが、帰国後、もう一踏ん張りしなければなりません。
20110615.jpg
 標記シンポジウムの第1日目を終えました。
 外国人の参加者はアメリカ、イスラエル、カナダ、オーストラリアなどから来ていましたが、ほとんどの人がユダヤ教関係の研究者であることがわかりました。ちなみに、中国人でないアジア系は、私一人です。
 右の写真は、参加者(大学院生を含む)の記念写真ですが、いただいた写真を iPhone で撮影したものなので画質はよくありません。

 ユダヤ教関係者が多いのは、今回のシンポジウムが南京大学のIntstitute of Jewish Studies によって開催されていることと関係しています。しかし、今日知り合った人の中には、有名な南京神学校の先生(組織神学者)もいたので、キリスト教関係もわずかながらいます。
 旧友の Archie Lee 先生(香港中文大学)も来ており、今日の発表では、中国の聖書翻訳の歴史について話していました。聖書のDragonは西洋社会では悪の象徴として理解されますが、中国では「龍」は高貴な存在なので、Dragon を簡単に「龍」と訳すことができない悩ましい事情があったとのこと。中国人は「龍の子孫」という考え方もあるので、Dragon を龍と訳すと、中国人自身が悪の末裔になってしまいます。翻訳における文化的差異が引き起こす難しさを、興味深く聞くことができました。
 ユダヤ教の専門家が、タルムードやミドラシュの話を始めると、私の理解力ではなかなかついて行くことができませんでしたが、全体としては、けっこう楽しめました。しかし、朝から晩までやっているので、さすがに疲れます。
 明日は、司会と発表の役が待っています。
 明日から開催される International Symposium on Monotheism and Postmodernism に参加するため、南京大学に来ています。朝から晩まで、ぎっしりと詰まったプログラムが二日間あります。
 南京大学のゲストハウス(ホテル)に宿泊させていただいているのですが、一般のホテルと変わらないクオリティに驚いています。日本の大学には、なかなかここまでの宿泊施設はないでしょう。
 南京大学の大学院生たちが、きめ細かな対応をしてくださるのにも感銘を受けました。
 南京国際空港に着いて、すぐにタクシーに乗せられたので、空港で両替をすることができませんでした。大学近くの銀行に学生の方が連れて行ってくれたのですが、両替するのに40分もの順番待ち。銀行で長時間待たされるのは、南京では普通らしいのですが、待ち時間の間、最近、テルアビブ大学からの留学から帰ってきたばかりという女子学生の方と、イスラエルやユダヤ教の話で盛り上がりました。幅広い知識を持っており、大学院生の質はなかなか高いと感じた次第です。
 余力があれば、明日以降の様子もブログで紹介したいと思います。
 
20110611_1.jpg
 6月11日、エジプト大使のアブデルナーセル氏を講師として CISMOR 講演会「変化するエジプトと宗教」を開催しました。
 一般に大使というと、政治学や外交の専門知識を持っているという印象ですが、この大使は何とイスラームや宗教を本格的に学んでおり、講演では古代エジプトの宗教からイスラーム、そして、現在のエジプトの様子、中東外交まで非常に幅広いテーマに触れられました。
 エジプトの憲法第2条には、イスラームがエジプトの公式の宗教であることと同時に、宗教に基づいた政党を作ることの禁止が記されています。つい最近、ムスリム同胞団が母体
20110611_2.jpg
となった「自由公正党」が公認されたばかりですが、やはり、この2条を踏まえて、宗教色を極力抑えています。ただし、この2条をどのように解釈するか、改訂すべきなのかという問いをめぐって、すでに激しい議論が交わされているとのことでした。

 講演会には160名ほどの来場者がありました。1時間に及ぶ質疑応答の時間があっという間に終わってしまうほど、次々に質問が出され、関心の高さをうかがうことができました。

 講演終了後、場所を変えて、研究会を持ちました。エジプトから Mohamed Hawary教授(Ain Shams University)、シリアからWahbeh al-Zuhili教授(Damascus 
20110611_3.jpg
University)を招き、エジプト革命後のイスラエルとの関係や、イスラームの寛容論などについて話を聞いた後、ディスカッションをしました。

 研究会終了後、京都駅のグランヴィアに移動し、夕食を共にしました。大使をお迎えしたということで、同志社を代表して、野本理事長にも同席していただきました。
 一神教研究にとってエジプト、中東は最重要地域の一つですが、エジプト革命(エジプトでは「1.25革命」と呼ぶらしいですが)以降、ますますその重要性が高まっています。政治改革の中に、宗教がどのような形で関与していくのか、新しい民主化モデルの模索に目が離せません。
 同志社大学はカイロ大学やアレクサンドリア大学と協定関係がありますので、来年度は、エジプトで共催の国際会議をしたいと考えています。
 YouTubeにアップしている動画の本数が50を超えると、内容が雑多なだけに、いかにもまとまりがありません。そこで、少しでも見通しをよくするために新たに再生リストを作成しました。YouTube KOHARAの「再生リスト」タブをクリックすると分類項目が出てきます(四つしかありませんが)。以下のような再生リストを作りました。

 トータルの再生回数が圧倒的に多いのは、やはり Church and Religions です。世界中から再生されています。
20110604_1.jpg
 6月4日(土)、かつての教え子、アレック・ラメイの結婚式に出かけてきました。場所は、東京のカトリック梅田教会。外国人の礼拝出席者が多い教会で、結婚式ではフィリピン人の方々が歌を歌ったり、郷土料理を振る舞ったりと大活躍でした。
 アレックの家族・親戚たちも多数、アメリカから駆けつけていました。結婚式は日英の両言語で進行していきました。
 アレックは、同志社大学大学院を修了後、上智大学大学院に移り、目下、博士論文を作成中です。
20110604_2.jpg

 結婚式では、フィリピンの方々のパワフルな歌声がすばらしかったです。また、披露宴では、アレックと彼の先生たちとの共演による尺八演奏も披露されました。これらはデジカメで撮影しているので、時間があればYouTubeにアップしたいと思います。
 京都・宗教系大学院連合(K-GURS)のチェーン・レクチャーの第5回目として佐々木 閑先生(花園大学)により「宗教教団の暴力性──オウム真理教」と題して、話をしていただきました。
 若い学生にとっては、オウムの一連の事件は幼い頃の記憶の彼方にありますので、佐々木先生が時系列的に詳細な説明をしてくださったのは、とてもよかったと思います。
 今回、オウムの特殊性を「律」をもった仏教との比較の中で際立たせていったのが、とても刺激的でした。日本仏教は「律」を持っていないので、オウムとの比較をしても意味がないとのこと。ほとんどの仏教が「律」を教団(サンガ)の要としてきたのに対し、それを持たない日本仏教はかなり特殊な存在であると言えます。
 仏教という組織を2500年にわたって維持してきた、まさにマネージメントの基盤に「律」があります。それによって、暴力の抑止(不殺生戒)もなされます。
 日本仏教の場合、そうした原則を持たないため、状況次第では暴力が許容されることになります。佐々木先生があげられていた例として、禅堂において師が弟子に体罰を加えることが正当化されたり、比叡山の僧兵や、戦時下における日本仏教界の戦争協力などがありました。いずれも「律」のもとでは厳しく戒められていることです。

 アジアのほとんどの仏教は「律」を持っていますので、絶対的に禁酒です。ところが、お坊さんがお酒を飲むことはごく普通の光景です。国際会議などで、日本の僧侶がビールで乾杯しているのを見て、他の国の僧侶たちが驚愕するのも、「律」の有無に関係しているようです。

 佐々木先生からサイン入りで近著『「律」に学ぶ生き方の智慧』をいただきました。今日の講義の多くのテーマをカバーしているようで、これから読むのが楽しみです。お薦めします。

20110602_2.jpg
 今日の学部ゼミに、グローバル・スタディーズ研究科の特別招聘客員教授のピエール・サネ先生をお呼びしました。サネ先生はセネガル生まれで、フランス、英国、カナダで教育を受けられた後、アムネスティー・インターナショナルとUNESCOで長く務めてこられ、今も、人権問題の最前線に立っておられます。
 人権問題を解決するための手がかりとして、文化的多様性を切り口に話をされ、死刑制度廃止の必要性も強く訴えておられました。
20110602_1.jpg
 学生たちも真剣にまなざしで耳を傾け、活発な質疑応答が行われました。

 学生にとっては、とてもよい刺激になったと思います。英語で討論することの大切さ・難しさを経験しながら、国際社会の実情を垣間見るというのは、貴重な経験です。こうした感触をどのように持続させ、コミュニケーション能力の向上に結びつけていくかを思案しているところです。

 写真の教室は、重要文化財のクラーク記念館2階にある教室です。いす・机の一つひとつに同志社マークが彫り込まれた最高級の調度品が備えられた、同志社の中ではもっともデラックスな教室の一つです。
You are the
 th Visitor
 since 01/07/2004.

自己紹介

近  著

2013年10月

    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    

月別 アーカイブ