小原On-Line

小原克博: 2007年5月アーカイブ

 小原克博 On-Line に「聖書のことば(コヘレトの言葉1:18)」(「チャペル・アワー案内」No.194)を追加しました。
 短いものなので、下に全文を掲載しておきます。
 ちなみに、「コヘレトの言葉」は旧約聖書の中に一文書です。シニカルなリアリズムが魅力的です。「コヘレトの言葉」全体は12章ほどの短いものなので、一気に読めます。

(以下、「チャペル・アワー案内」より引用)

 知恵が深まれば悩みも深まり、知識が増せば痛みも増す。(コヘレトの言葉1章18節)

 賢者によって語られたこの言葉は、これから意気揚々と学びを始めようとする新学期に聞くには重すぎるほどである。「悩み」や「痛み」の中身は、コヘレトが生きた時代と我々の時代との間に大きな差があるに違いない。しかし、彼の洞察は、科学技術に先導される現代社会の深部にまで及んでいるかのようである。人の欲望が新しい知識や技術を生み出し、それがまた人の欲望を駆り立てていく。この無限上昇のスパイラル構造から、一体、誰が逃れ出ることができるのか。
 コヘレトはこの世で労苦する「空しさ」を繰り返し語り続ける。しかし、この世の空しさをつぶさに観察する現実主義者コヘレトがたどり着いた結論は次の言葉である。「神を畏れ、その戒めを守れ」。「畏れ」の感覚を失った現代人は、この一見単純な結論の中に幾重にも折り込まれたリアリズムを直視する勇気を持ちうるであろうか。

 全国的に強風の日があったようですが、私の住んでいるところは、山の近くでもともと風が強いので、なおさらです。先週は金・土と、JR湖西線が強風のため一時運休しました。強風のために途中下車、というのは慣れているのですが、今回こたえたのは、強風による野菜の被害!
 1週間ほど前に、トマト、キュウリ、シシトウ、キュウカンバ、すいか等々を植えたのですが、強風のため、茎の中程から折れたりしていました。植木が傾くなどの被害もあり、今日は復旧作業にかなり手間取りました。
 冬を越して、いよいよこれから収穫というニンニク畑も、半分ほどが強風でやられてしまいました。
 例年は、この時期に強風はないので無防備であったのが裏目に出てしまいました。今回の被害を、よき教訓にしたいと思っていますが、実際には、泣き寝入りするしかない部分もありますね。(T_T)

070513  5月12日(土)、CISMORと国際イスラーム大学(マレーシア)の合同の国際シンポジウムが行われました。マレーシアからは、以下のプログラムにあるように3名の先生方が来られました(右写真)。
 今回のテーマは「一神教における救済と多元主義」
 私も発表をしましたが、とにかく時間がない中で準備したので、緻密な議論は展開できませんでしたが、「宗教の神学」を中心に話題提供しました。

 今週猛烈に忙しかったので、どっと疲れましたが、このシンポジウムが終わって、気分的には一山越えた感じです。

1st session
Hazizan Md. Noon (Dean of Kulliyyah of Islamic Revealed Knowledge & Human Sciences)
"The Nucleus of Islamic Religion and its Bearing upon Islamic Concept of Salvation and Practice of Multiculturalism in Contemporary Malaysia"

Hassan Ahmed Ibrahim (Deputy Dean of Kulliyyah of Islamic Revealed Knowledge & Human Sciences)
"Uniculturalism, Multiculturalism and Islamic Thought in the Pre-modern Era: The Cases of Shaykh Muhammad Ibn Abd Al-Wahhab and Shah Wali Allah"

Ibrahim Mohamed Zein (Deputy Dean of Kulliyyah of Islamic Revealed Knowledge & Human Sciences)
"Pluralism,Unity and the Ethics of Disagreement in Islam"

2nd session
Michio Tokunaga (Kyoto Women`s University)
"The Concepts of "Salvation" and "Emancipation" in Pure Land Mahayana"

Isaiah Teshima (Doshisha University)
"In Quest of the Repentance: An Overview of Judaism's Mind Structures and Ideas"

Katsuhiro Kohara (Deputy Director of CISMOR, Doshisha University)
"A Critique of the Pluralist Model: "Exclusivism" and "Inclusivism" Revisited"

3rd session
Discussion

070508  本日、Kim Heup Young 先生(カンナム大学)を招いて、CISMOR主催の研究会を行いました。
 Kim先生の発表タイトルは"Christ as the Tao: an East Asian Christology of the Tao (Christo-tao)"
 タオ(道)の概念を中心にして、東北アジアにおける Contexual Theology を模索した発表であったと言えます。
 韓国社会において、タオが今なお人々の考え方に影響を及ぼしていることは、韓国の国旗(太極旗)を見てもわかると思います。
 問題は、それをどこまで東北アジアの共通項として使うことができるか、また、さらにそこから西洋の神学をどのように相対化していくことができるか、という点にあるでしょう。

 Kim先生はアジア神学のパイオニア的存在ですが、この点、日本は本当に弱い! アジアという自覚が薄いというだけでなく、日本的文脈を神学の課題として積極的に受けとめていくモチベーションがきわめて低いです。
 この分野に関して、私はまだ十分な思索を展開できていませんが、Kim先生の熱いパッションに促され、アジア神学に貢献できるような道を進みたいと思っています。

 本や雑誌の紹介が続いていますので、ついでにもう一冊。
 目下、フランスで大統領選挙の開票作業が進んでいますが、フランスの政教分離に関するものとして、次の本はおすすめです。

工藤庸子『宗教 vs. 国家――フランス〈政教分離〉と市民の誕生』講談社、2007年(講談社現代新書 1874)。

 私が担当している大学院ゼミの一つで、今学期、政教分離を扱っているのですが、そのリーディング・アサインメントとしてこの本を指定しました。
 政教分離の多様性を考えるとき、厳格な分離の典型例としてフランス型政教分離があげられますが、その成立経緯についてわかりやすく論述した本はあまり多くありません。
 フランス革命によって、共和国の「ライシテ」(非宗教)の原則が一気にできあがったわけでなく、国家による宗教統制などの紆余曲折を経て、ライシテが選び取られていった経緯を上記の本は教えてくれています。
 単に、宗教(カトリック) vs. 非宗教 という二項対立でライシテを理解することが間違いであること学ぶことができるでしょう。
 20世紀前半までが叙述の対象ですが、それをもとにして、スカーフ事件にも言及しています。

 ヨーロッパの今後を考える上で、フランスの状況からは目が離せません。

 今月号の『論座』(6月号)は「日本国憲法」を特集していたので買ったのですが、他にも興味深い記事がたくさんあり、買い得感がありました。
 加藤周一氏と樋口陽一氏の対談は、いろいろと考えさせられるポイントを含んでいます。

 大学院生には「大学院は出たけれど――夢を追い続ける「高学歴就職難民」2万人」を読んで欲しいです。背筋の凍るような現実も認識した上で、勉強にいそしんだ方がよいでしょう。

 「私流 本の整理法」には、藁にもすがる思いで目を通しましたが、あまり役には立ちませんでした。しかし、皆苦労している有様を知ることは慰めになります。
 恥ずかしながら、本の整理がなかなかできません。私の研究室に来た人は、あちこちに本が積み上げられているのを目の当たりにすることになりますが、あの山がなかなかなくならない! ぐらぐらして、くずれかけている山も増えてきたので、何とかしなければと思っているのですが・・・

 まだ読み終わってはいないのですが、読み応えのある本を一冊紹介します。
 ワンガリ・マータイ『UNBOWEDへこたれない――ワンガリ・マータイ自伝』(小池百合子 訳)、小学館、2007年。

 ノーベル平和賞を受賞した、あのマータイさんの自伝です。イギリスによるケニアの植民地化の歴史から始まり、自らの人生へとつなげていきます。歴史的な叙述がしっかりしており、マータイさんの半生を軸にして、20世紀という時代を振り返ることができます。
 入植者たちによってケニアは土着の生活様式を大きく変えられていきますが、キリスト教宣教師たちによる変化も細かく描写されています。

 30年間で3000万本もの植林をした人物の不屈の精神が、どのようにして育まれてきたのかを知ることができます。

070501 4/28-29、同志社びわこリトリートセンターで神学部新入生キャンプが行われました。右の写真は夕食(しゃぶしゃぶ)の風景。このリトリートセンターは、料理の評判が高いです。
 今年度、私は1回生の必修クラスを担当しているので、比較的よく顔を合わせている方なのですが、教室だけではなかなか顔と名前を一致させ、また、一人ひとりの様子を聞くことはできません。
 その意味では、こうしたキャンプを通じて、教員と学生が親しく語り合えるのは、神学部ならではのスケール・メリットであると言えます。
 4年の大学生活で、どのように成長していってくれるのか楽しみです。

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近  著

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