小原On-Line

書籍・雑誌: 2007年5月アーカイブ

 本や雑誌の紹介が続いていますので、ついでにもう一冊。
 目下、フランスで大統領選挙の開票作業が進んでいますが、フランスの政教分離に関するものとして、次の本はおすすめです。

工藤庸子『宗教 vs. 国家――フランス〈政教分離〉と市民の誕生』講談社、2007年(講談社現代新書 1874)。

 私が担当している大学院ゼミの一つで、今学期、政教分離を扱っているのですが、そのリーディング・アサインメントとしてこの本を指定しました。
 政教分離の多様性を考えるとき、厳格な分離の典型例としてフランス型政教分離があげられますが、その成立経緯についてわかりやすく論述した本はあまり多くありません。
 フランス革命によって、共和国の「ライシテ」(非宗教)の原則が一気にできあがったわけでなく、国家による宗教統制などの紆余曲折を経て、ライシテが選び取られていった経緯を上記の本は教えてくれています。
 単に、宗教(カトリック) vs. 非宗教 という二項対立でライシテを理解することが間違いであること学ぶことができるでしょう。
 20世紀前半までが叙述の対象ですが、それをもとにして、スカーフ事件にも言及しています。

 ヨーロッパの今後を考える上で、フランスの状況からは目が離せません。

 今月号の『論座』(6月号)は「日本国憲法」を特集していたので買ったのですが、他にも興味深い記事がたくさんあり、買い得感がありました。
 加藤周一氏と樋口陽一氏の対談は、いろいろと考えさせられるポイントを含んでいます。

 大学院生には「大学院は出たけれど――夢を追い続ける「高学歴就職難民」2万人」を読んで欲しいです。背筋の凍るような現実も認識した上で、勉強にいそしんだ方がよいでしょう。

 「私流 本の整理法」には、藁にもすがる思いで目を通しましたが、あまり役には立ちませんでした。しかし、皆苦労している有様を知ることは慰めになります。
 恥ずかしながら、本の整理がなかなかできません。私の研究室に来た人は、あちこちに本が積み上げられているのを目の当たりにすることになりますが、あの山がなかなかなくならない! ぐらぐらして、くずれかけている山も増えてきたので、何とかしなければと思っているのですが・・・

 まだ読み終わってはいないのですが、読み応えのある本を一冊紹介します。
 ワンガリ・マータイ『UNBOWEDへこたれない――ワンガリ・マータイ自伝』(小池百合子 訳)、小学館、2007年。

 ノーベル平和賞を受賞した、あのマータイさんの自伝です。イギリスによるケニアの植民地化の歴史から始まり、自らの人生へとつなげていきます。歴史的な叙述がしっかりしており、マータイさんの半生を軸にして、20世紀という時代を振り返ることができます。
 入植者たちによってケニアは土着の生活様式を大きく変えられていきますが、キリスト教宣教師たちによる変化も細かく描写されています。

 30年間で3000万本もの植林をした人物の不屈の精神が、どのようにして育まれてきたのかを知ることができます。

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近  著

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