小原On-Line

小原克博: 2010年2月アーカイブ

 先日紹介した雑誌DIMEの記事の一部が、Yahoo の X Brand というコーナーに転載されることになりました。以下のリンクをご覧ください。他の関連した紹介記事を見ることができます。

■DIME X Brand

■あの人が『iPhone』を使う理由
 6年前に書いたブログ記事「南禅寺〜哲学の道」が、旅行会社のサイトで使われることになりました。元記事と、転載先を記しておきます。

が、
に転載されています。

 さすがに6年前の記事は懐かしい! 適当に書いた文章、適当に撮った写真が、そのまま転載されてしまっているのは、ちょっと恥ずかしいですが。

 久しぶりに南禅寺のサイトを見ました。日本語の説明はまずまずですが、英語のページはかなり貧弱です。これは南禅寺に限ったことではありませんが、京都観光を予定している外国人が、このページを見たとき、このお寺が何をアピールしたいのか、よくわからないでしょう。
 日本人でも「臨済宗」がどのような特徴を持つのか、同じ禅宗である「曹洞宗」とどのように違うのかを理解している人は多くないと思います。外国人観光客の場合はなおさらです。
 仏教について何も知らない人に、臨済宗の特徴をどのように伝えるか。こういう視点で、ポイントをまとめてくれれば、それは日本語であっても英語であっても、きっと魅力的なメッセージになると思います。
 前回の記事を書いた後に、実物がアメリカの自宅に届きました。あけて、びっくり。いや〜、実に盛りだくさんの情報です。美術・芸術の視点からキリスト教を理解するという試みは、かなりの程度成功していると思いました。これだけふんだんにカラー写真を使って、600円というのはお買い得だと思います。
 編集者の方に郵送していただいたことに対するお礼のメールを書いたところ、発売当日の売り上げが、最近の中では最高記録を出したとのこと。ヨーロッパなどの美術館や教会に関心はあるけれども、キリスト教のいろはがわからないという一般読者にアピールしたのだと思います。
 「キリスト教とは何か」という特集タイトルを見て、それが教義や歴史のことばかりだったら、たぶん、多くの人は購入にまでは至らないでしょう。色鮮やかなキリスト教美術や教会建築がちりばめられた紙面を見ると、よくわからないけど、おもしろそう!と思うかもしれません。ビジュアルは大事ですね。
 ちなみに、カトリックで絵画が発展したのも、まさにビジュアル志向だったからです。たとえ文字が読めなくても、絵画はメッセージを伝えることができます。プロテスタントがビジュアルなものから背を向けて、どちらかというとロジックの世界へと分け入ったのは、その時代の決断としては意味があったと思うのですが、多くのものを棄てすぎたような気もします。

 手元に届いた実物を眺めながら、ふと思ったことの一つは、これならキリスト教概説の教科書としても使えそうだ、ということです。もちろん、学問的な説明をきちんと付け加えていかなければなりませんが、教材としてはなかなか魅力的です。ちょっとカトリックに寄りすぎているかな(プロテスタントの教会建築の紹介が少ない)という印象はありますが。
 いずれにしても、いいものを作ってくれました。あらためて、おすすめします。

20100214.jpg
 雑誌 Pen の最新号(2月15日発売)が「キリスト教とは何か」を特集しています。Pen は美術系の雑誌なのでキリスト教美術が中心なのですが、トップページには次のような説明があります。

美しさに目を奪われるとき、そこに理屈は不要だ。
ただ直截的に感じればいい。
しかし──より理解を深めることで、
本質が見えてくることもある。
ヨーロッパの都市を訪れた際に、多くの人が
美術館や教会に足を踏み入れるだろう。
そして、古い芸術作品を目にして、こう感じるはずだ。
「キリスト教のことをもっと知っていたら、
より楽しめるのに......」
今号のPenは、どんな本よりもやさしく、
キリスト教を解き明かします。
おさえておくべきエピソードや歴史に残る名場面も満載。
これを読めば、西洋絵画や教会建築が
もっと面白くなること間違いなし!の完全保存版です。

 とまあ、「どんな本よりもやさしく、キリスト教を説き明かします」という具合に、自信に満ちた紹介文がありますが、その真偽を確かめる意味でも、一度、店頭で手にとっていただければと思います。
 美術関係以外のキリスト教の説明部分を私が監修しています。
 最初に拝見した原稿は、怖いもの知らずのような勢いがあり、どういう形で無難におさめたらよいか、けっこう悩みました。
 途中で気づいたのは、学問的な本から、信仰者向けの本をかなりごちゃ混ぜに参考文献として使っているということでした。「一般読者にわかりやすいように書きたい」という編集者の意向を最大限尊重しながら、やり取りを重ね、ようやく最新号の発行に至ったという次第です。
 私が担当した部分以外についてはまったく知りませんので、全体としてどのような雰囲気で仕上がっているのかは、今のところ、わかりません。キリスト教美術に対するよい入門書となっているはずですので、まずはご覧になってください。

■ Pen 最新号目次

 昨年からすでに始まっている科学研究費補助金の研究要旨を掲載するのを忘れていました。科学研究費補助金は国民の税金よりまかなわれているわけですから、何を研究しているのか、きちんと説明する必要があります。しかし、年度末になって今年度予算の執行を精査していく中で、アップし忘れていたことに、ようやく気づいたという次第です。
 2009-2012年度の4年間にわたって「ポスト・セキュラリズム時代の比較宗教政策研究──信教の自由、政教分離を中心に」というテーマで研究を行います。
 今、あらためて申請した内容を読み直してみると、テーマがでかい! う〜ん、本当にできるのかと思ってしまいますが、そこそこできれば、結構おもしろい成果を出せるかもしれません。
 申請内容をきちんとアップすることによって、研究への自覚を自らに促したいと思います。
 「あの人が iPhone を使う理由」、『DIME』(小学館)2010 No.04(2月2日発売号)を追加しました。
 DIMEの編集者から、最初、5つのお薦めアプリをあげるように、また、用意された質問に答えるように、と言われ、あれこれウンチクを書いて送ったのですが、最終的には全体のバランスの中で、超スリムにまとめられてしまいました。まあ、仕方がないですね。
 お薦めアプリとして残された二つは、GoodReader という各種ファイルの閲覧用アプリと、英英辞典の Oxford Delux です。
 ちなみに、上のリンク先で表示されている GoodReader のサンプル画面は、UCSBのキャンパスマップです。建物がたくさんあるので、このキャンパスマップは重宝します。
 Oxford Deluxはアプリとしては猛烈に高いですが、まあ紙の辞書を買うことを考えれば、リーズナブルかもしれません。つい数日前、ゼミでニーチェを読んでいたとき、出席者の間で、nihilism の発音の仕方が分かれました。ナイアリズムか、ニヒリズムか? Oxford Dictionary of English ではナイアリズムとなっているということで、発音を聞かせたところ、一同、納得。アメリカ英語の場合、どっちでもよいのでしょうけれど、一応、正式と言われる音声データは、意外なところで役に立ちました。
 「教育の対価」(『京都新聞』2010年2月10日、夕刊)を追加しました。
 日米の教育比較に思いを巡らせながら書いたものですが、文字数の関係から、アメリカの大学の様子を細かく記すことはできませんでした。
 アメリカの大学教育を理想化するつもりはありませんが、それを比較の対象とした場合、日本の教育は、まだまだ改善の余地があることを痛感させられます。
 既存のシステムの中でできることは限られているのかもしれませんが、より密度の高い知的興奮を味わえるような授業にしていくための工夫を考え出していきたいと思っています。
 Yomiuri Online で、とても興味深い記事を見つけました。一部引用しますが、記事の中にあったグラフがカリフォルニア大学9校の様子をよく表していますので、直接に記事をご覧になってください。

http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20100207-OYT1T00334.htm

米加州大、アジア系学生を締め出し?
 ノーベル賞受賞者を多数輩出するなど世界トップレベルの州立大学群として知られる米カリフォルニア大学が、2012年から、学業成績のみだった入学選考基準を見直すことに対し、アジア系団体などが「アジア系学生を締め出す措置」と反発を強めている。
 背景には、勉学熱心なアジア系学生が一部校で全学生の5割を超えるなど他人種を圧倒している実態がある。
(中略)
 同大学の学部は9校からなり、現在の学生数は計約17万人。カリフォルニア州のアジア系人口は約13%だが、アジア系学部生は旗艦校のバークレー校で41・6%、ロサンゼルス校(UCLA)で38・2%、アーバイン校で52・2%を占めるなど、7校では州内で約44%を占める白人より多い。入学者は1990年代中頃から急増、アジア系の中では、中国系が最も多く、韓国系、フィリピン系、日系が続く。

 簡単に言えば、カリフォルニア大学でアジア系学生が増えすぎて、白人学生を比率的に圧迫しているので、何とかしなければならない、という話です。
 アーバイン校では何と52パーセントがアジア系学生! 確かにすごい数です。アジア系学生比率が一番低いのは、私のいるサンタバーバラ校。それでも20パーセント近くあります。サンタバーバラでは、確かにアジア系が多いという印象はあまりありません。なぜこうなっているのかは、よくわかりませんが。
 多少比率の差があるとは言え、アジア系学生がこれだけの割合を占めているのは、さすがにカリフォルニアらしいと言えます。東海岸の大学では、こうはいかないでしょう。
20100207_1.jpg 近郊の Solvang に出かけ、そこで Mission Santa Inés を訪ねました。Mission Santa Barbara と同じく、17世紀後半に始まったスペイン人宣教師たちによるカリフォルニア宣教の拠点の一つです。
 Mission Santa Inés は1804年に設立されたそうですが、現在の建物は、元の建物が1812年の大地震によって崩壊した後に建てられたものです(1817年献堂)。
 Solvang の街は海岸からはかなり奥まった場所にあるのですが、当時は決して便利とは言えなかった山間部に Mission Santa Inés が作られたのは、チュマシュ族への宣教という目的がありました。
20100207_2.jpg
 なかなか複雑な歴史がありますが、詳しいことは Mission Santa Inés のサイトに記されていますので、関心のある方はご覧ください。

■Mission Santa Inés

 左の写真は、教会の前にぶらさがっている鐘です。かなり古そうな感じがしました。スペイン語で EL CAMINO REAL という文字が刻まれています。英語にすると、The Royal Road となります。これは、カリフォルニア・ミッションのことを意味していますが、カリフォルニアでは、この名前は、けっこういろいろなところで見かけます。ちなみに、私が一番頻繁に買い物に行く Costco などがある巨大ショッピング・エリアは Camino Real Market と呼ばれています。

20100207_3.jpg
 19世紀初め、デンマーク移民たちがこの Mission Santa Inés を中心にして、新しい街作りをし誕生したのが、現在の Solvang です。
 Solvang の近くで、今日は、だちょうの群れを見ました。どういう場所なのか、いずれ確かめたいと思っています。
 サンタバーバラからソルバンクへ北ルートで向かうときには海岸線を沿って走ります。とてもきれいで、所々に見学スポットがあります。右の写真は、フリーウェイから途中下車して撮ったものですが、海岸線のすぐわきに電車の線路があるのが見えると思います。
20100207_4.jpg
 何の囲いもありませんので、線路に近づくことができますが、こちらの線路はだいたいどこも、このような感じです。
 アメリカは圧倒的に車優位の社会ですので、鉄道はあまり発達していません。本数も少なく、またスピードも遅いです。写真に写っている線路が、高速車両になって本数も増えれば、ちょっとは人気が出るかもしれません。眺めは最高にいいはずなのですが、車と飛行機には、なかなか勝てないでしょうね。
 2月4日に以下のような講演会があり、参加してきました。講演者の Yang 先生は何かと私に声をかけてくれる、とても親切な方です。

"Sovereignty And Disenchantment: Postcoloniality, Religiosity, And Modernity In China"
Prof. Mayfair Yang

Religious Studies & East Asian Languages & Cultural Studies Departments, UC Santa Barbara

In the long twentieth century, modern China experienced perhaps the world's most radical and systematic secularization process and the decimation of traditional religious and ritual cultures, both intangible and material cultures. This paper seeks to account for this experience by engaging with postcolonial theory, a body of discourse seldom found relevant to China Studies. The paper attempts a two-pronged critique of both state secularization and some aspects of existing postcolonial studies/theory.

 中国の近代化は、急激な世俗化をともなっており、日本の近代化プロセスと比較するとおもしろい点がいくつもあります。
 しかし、日本と同様、宗教を管理するために、「宗教」と「迷信」の二分法的な管理を行い、迷信的と思われるものに対しては、かなり否定的な態度を取ってきたようです。基本的には、これは現代の中国にまで引き継がれています。

 質疑応答の時間において私は次の二つの質問をしました。
1)中国の近現代史における「宗教」概念の変遷について
2)現代の中国における「宗教の自由」について

1)については、私は質問の中で、日本が religion に対応する言葉として「宗教」を再定義したことを説明し、今日、「宗教」は必ずしも普遍的な概念とは言えず、むしろ、それがプロテスタント的な概念であることが指摘されているが、中国の場合、どのような概念上の変遷があったのか、ということを尋ねました。
 中国語における「宗教」概念は、日本から輸入されました。したがって、中国語の「宗教」は日本語の「宗教」とかなり似た意味を持っているようです。先にも述べたように、「宗教」と「迷信」の二分法がよく用いられてきたこと、それがプロテスタントに由来することを述べておられました。カトリックの聖人信仰などをプロテスタントは「迷信」と呼んだ、との説明がありました。
 もちろん、こうした歴史的事実はあるのですが、私は再度のコメントの中で、「宗教」と「迷信」という用語法は宗教改革時代にもあるが、ローマ時代にまでさかのぼること、特に、キケロが明確にそれを用いていることを付け加えておきました。

2)については、現代の中国における深刻な問題だが、「宗教の自由」は十分ではないとの返答でした。エピソードとして、中国の国家宗教事務局を訪ねた際のやり取りを紹介してくれました。公認宗教以外への対応を聞いたところ、「迷信」をまともに相手にする必要はないと返事をされたとのことでした。

 講演の中では、ポストコロニアリズムなど盛りだくさんのテーマが扱われていました。
 中国の宗教について関心のある方には、Yang 先生が編集している次の本をお薦めしておきたいと思います。

Mayfair Mei-Hui Yang ed., Chinese Religiosities: Afflictions of Modernity and State Formation.

20100201.jpg 雑誌 DIME(小学館) の2月2日発売最新号に、私のちょっとした記事がのっています。私は実物を手にしていませんので、どういう形でのっているのかはよくわからないのですが。
 「今、みんなが『iPhone』に買い替える理由」という特集が組まれているようで、その中に出てきます。
 iPhoneのアプリなどについてかなり詳しく書いたのですが、原稿段階で、ライターの方によってかなりシンプルに切り詰められていました。したがって、かなり「軽い」感じのコメント記事になっていると思います。

■ DIME 最新号

 本屋に立ち寄られたら、手に取ってみてください。
 ちなみに、DIMEとういう雑誌、私は今までちゃんと中身を見たことがありません(笑)。
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自己紹介

近  著

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