小原On-Line

CISMOR: 2011年11月アーカイブ

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 11月26日、「イスラームと科学」をテーマとしてCISMOR公開講演会を開催しました。
 今回は、エジプトとイランから以下の方々を講師としてお招きしました。

モジュタバー・ザルヴァーニー(イラン・テヘラン大学准教授)
サラーハ・オスマン(エジプト・メノフィア大学教授)
【ゲストパネリスト】小杉泰(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科教授)

 講師の話は、科学に言及しながらも、大半はイスラーム哲学のことでした。固有名詞がばんばんと登場し、専門家でなければ、すぐには理解できないようなレベルの話になったため、内心、あせりました。一般の来場者の方々に、どの程度理解されているだろうかと心配したからです。
 しかし、今回、パネルディスカッションのために小杉先生をお呼びしていたのが大きな助け船となりました。わかりくい点をうまく補い、イスラームの科学に対する考え方を実にうまく話してくれました。さすがです。
 イスラーム世界の場合、科学の中にも、それを社会にどのように適応すべきかを考えるために哲学や宗教が一定の役割を果たしています。西洋やそこから科学を導入した日本の場合には、科学技術だけが突出し、それをどのように評価し、生かすべきかという議論がなかなかうまく機能していない側面があります。3.11以降の原子力エネルギーの問題も、パネルディスカッションの中で少し言及されました。

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 研究会では、religious science という言葉が話題になったので、アメリカにおける進化論論争を紹介しながら、進化論のイスラーム世界における受容について質問しました。予想したとおり、進化論はほぼ完全否定されています。進化論は科学としてはうけとめられていないとのこと。
 科学という媒介項を入れることによって、イスラーム文明や西洋文明の関係や違いを俯瞰することのできるおもしろさを感じることのできた講演会・研究会となりました。
 シンポジウム終了後、続く数日、忙しくて報告が遅れてしまいました。二日目は、具体的な事例や提案などをともないながら、サウジアラビアと日本をベースとした平和構築の可能性が模索されました。
 サミール先生からは日本宗教、特に神道とイスラームとの親近性が紹介され、また、黒住教の副教主の黒住宗道氏からは多神教的でもあり、一神教的でもある黒住教についての紹介がありました。黒住教は、太陽神・天照大神への信仰を重視しています。今回、黒住氏とかなり密に話をすることができたのも、私にとっては大きな収穫でした。
 黒住教は、19世紀前半に設立した日本の新宗教の中でも最古のものです。後に教派神道の中に分類されますが、多くの神道の流れが国家神道に統合されていく中で、それ以前の神道の姿を今に至るまで保持しているという特質を持っています。岡山が本部ですが、いずれお訪ねしたいと強く感じました。
 サウジアラビアからの方々の多くは日本宗教についての知識が十分ではありませんので、断片的とはいえ、日本宗教についての紹介の機会があったのは、とてもよかったと思います。

 私は最終セッションで、再度、話をしましたが、以下の五つのポイントを今後の課題として提示しました。
1)サウジアラビアと日本とのユニークな関係に基づいたユニークな対話を構築する。
2)両国の共通基盤としての平和への希求を具現化していく。
3)自己批評を含む学問的な蓄積を重視する。
4)平和と対話を促進するための教育プログラムを考える。

 今回のシンポジウムは、土曜日と日曜日にかけて行われましたが、私にとっては金曜日の授業終了後に東京に駆けつけ、日曜日の夜帰宅し、月曜日の1時間目から授業があったため、かなり疲労困憊した数日となりました。
 しかし、サウジアラビアの側からは非常に強い関心を日本およびCISMORに向けてくれていますので、今後もこの関係を維持し、少しずつでも発展させていくことができればと考えています。
 今回のシンポジウムの全体がサウジ・テレビなどのメディアによって収録されています。私もインタビューを受けました。同志社やCISMORのことがアラビア語圏に広く伝えられるという意味でも、苦労した甲斐があったように思います。

 以下に、シンポジウム全体のスケジュールをつけておきます。
 二日間の国際シンポジウムを終えて、夜、帰宅しましたが、疲れ果てましたので、報告は後ほど。ひとまず、一日目の写真をつけておきます。

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記念のプレートをスレーマン学長からもらっています。左隣は鳩山・元総理。

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なぜか、始まっていきなり記念写真。サウジの方は、こういうのが好きです。
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 11月19日、サウジアラビア・イマーム大学とCISMOR共催の国際シンポジウム「対話を通じての平和構築」がアラブ・イスラーム学院で始まりました。アブドゥラ国王主導の行事なので、サウジアラビア大使館なども全面的にバックアップしてくれています。
 来賓のメインは、右の写真にあるように、鳩山由紀夫・元総理です。オープニングセッションでのスピーチでは、かなりしっかりと準備された内容を話されており、感心しました。

 サウジ流といったらよいのか、タイム・マネージメントはきわめて大ざっぱなので、午前のセッションもかなり時間がずれ込みました。おかげで、かなりタイトな時間の中で、私も話をしなければなりませんでした。
 午後になると、徐々にかみ合った話やコメントが出てきて、「対話」の雰囲気が形成されてきました。
 イスラームの戦争観、平和観が紹介される中で、現実との突き合わせなども行われ、生産的な議論になってきました。二日目は、さらに具体的な話し合いができるのではないかと期待しています。
 今回の使用言語は、アラビア語と日本語。すぐれた同時通訳者がいるので助かります。

 私の話した内容を早速、YouTubeにアップしましたので、関心ある方はご覧ください。25分程度です。

20111118.JPG 11月19日と20日に行われる国際シンポジウム「対話を通じての平和構築」(イマーム大学とCISMORの共催)の歓迎パーティがサウジアラビア大使館で行われました。大使館は六本木一丁目の駅の近くにあります。わたしははじめてここを訪ねましたが、右の写真のように、建物の中身はサウジアラビア風にアレンジされていて、とてもいい雰囲気でした。
 今回、サウジアラビアからかなりの人数が来ているようです。
 歓迎パーティは、食事開始前に、エライ方々のスピーチが延々と続き、トータルすると1時間以上ありました。これは日本の比ではありません。しかも、すべてアラビア語なので、疲れた身でようやく東京にたどり着いた私としては目を開けているのが精一杯という感じでした。
 にもかかわらず、最後にいきなりマイクを回され、英語でもいいので話してくださいとのこと。私はアラビア語はまったくできませんので選択の余地はありません。それまでの話の内容がさっぱりわからないので、そもそも何を話したらいいのかもよくわからなかったのですが、適当な話をしました。
 明日から二日間にわたるシンポジウムが始まります。私はオープニングセッションと最終セッションでスピーチをすることになっています。
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